
東京に町工場のHUBをデザインする
スタートアップを支えるモノづくりの事業環境
町工場を効率的かつ有効的に活用する
東京には、2万を超える工場が稼働しているとされています。その多くは家族経営の小さな製造所が多く、多種多様な分野に細かく分かれているのが特徴です。こうした東京の工場集積地は、西側は大田区に、東側(東京イーストサイド)は葛飾区、足立区、墨田区、江戸川区などに展開しています。TOKYO町工場HUBがホームとする東京イーストサイドにおいては、製造分野の多様性が特徴です。最先端の金属加工から伝統産業までバラエティに富んだ町工場が存在します。
スタートアップにとって町工場は有効な製造パートナーとなりえます。特に東京近辺で事業を展開している者にとっては、地場での生産は多くのメリットがあります。一方、町工場の規模は小さく、また得意とする技術分野が狭い(しかし、深い)こともあり、様々な制約もあります。
町工場を利用するメリット
- 技術力の高さ
- 多様な技術群
- 経験や知識の開発への応用
- 日本製の安心・信頼感
- 相談のしやすさ
- 機動的な対応
- 少量多品種への対応
- 直接発注によるコスト節約
町工場の持つ制約・限界
- 対応できる技術の幅が狭い
- 自社に適合する工場を見つけるのが困難
- 個別の工場に関する情報が限られている
- 複数の工場との連携が必要
- 量産のレベルに限界
- 繁閑の波に季節性がある工場もある。
- 最初はとっつきにくい
- 柔軟性に欠ける工場も少なくない
スタートアップ側の課題
曖昧な要求を明確にする難しさ
多くの案件に取り組んできた経験から、スタートアップが工場との付き合いに二の足を踏む理由のひとつに要求を明確にする難しさがあると感じています。
工場は指定された仕様や設計通りに作るのが仕事ですが、大抵の案件は要求が曖昧なことが多いのが実情です。過去に例のない開発の場合、どこから何をどのように進めるべきか、判断が難しいのです。エンジニアの背景のある経営者であっても、全ての技術や生産方法について知識や経験がある訳ではなく、どう相談したら良いか戸惑うこともあると思います。
工場側も自社の得意とする技術分野についてはアドバイスもできますが、それ以外の分野については一般的な知識しか持たないことも少なくありません。また、大企業からの上位下達式の請負で仕事をしてきた慣習から「言われたことを言われた通りにこなす」ことが身についていて、あいまいな要求を詰めていくプロセスには苦手意識を持つところも少なくありません。
テクノロジーリスクとマーケットリスク

スタートアップのモノづくりで難しいのは、開発段階でテクノロジーリスクとマーケットリスクの両方を見据えながら進めていくことの難しさです。技術的な課題やリスクを抱えながら、新しい製品やサービスの需要を測る必要があり、試行錯誤が必要となります。実際、開発にあたり、技術課題に優先順位をつけ、MVPの仕様をどこまで突き詰めるか、経営者としての悩みどころです。リーンスタートアップのコンセプトは分かっていても、理屈通りに進まないことも多く、難しい判断が求められます。要求が曖昧になってしまう要因の一つでもあります。
一方、こうした悩みを工場側に理解してもらうのは一般に難しいのが現状です。技術的な課題があれば、工場は解決に向けて最大限の努力をしますが、個別課題についての優先度や取り組むタイミングについては、スタートアップ側が明確に指示を出す必要があります。
この両者のギャップの橋渡しは容易ではありません。両方の状況について理解する必要があり、しかも戦略的な取り組みが求められます。
TOKYO町工場HUBのソリューション
TOKYO町工場HUBの
ソリューション
スタートアップに対応した町工場のHUBをデザイン
スタートアップに対応した
町工場のHUBをデザイン
上記の課題に対しては、既存のマッチング手法では対応しきれないことは明白でした。TOKYO町工場HUBでは、東京のイーストサイドに範囲を絞り、様々な具体的な案件を通じて工場を厳選、独自のネットワークを構築し、具体的な方法論を築き上げてきました。現在、形成してきた町工場のHUBを活用し、モノづくりを手がけるスタートアップの事業開発支援に取り組んでいます。
町工場の厳選
スタートアップやクリエイターのニーズや特殊な状況にも対応が可能な町工場を厳選。技術力の高さに加え、新しいアプローチにも挑戦する気概のある経営者を選別。

HUBの形成
厳選した工場をHUBとして、異なる分野の工場間ネットワークを形成。多種多様なスタートアップのニーズに応える技術クラスターとして機能する仕組みづくりに注力。

プロセスの構築
スタートアップが具体的に工場と開発を進めるにあたってのプロセスを構築。資金、人材、時間など様々な制約がある中でリーンに開発を進める手法を開発。

価値創造のための町工場ネットワーク
東京の町工場は、従業員が5人未満の小規模なところが多く、特定の分野での技術力が非常に高い一方、1社で製品を完結させることは難しく、相互に協力しながら、発注者の様々なニーズに応えてきました。しかし、町工場の数が激減する中、このような協力体制は至る所で寸断されており、ものづくりのエコシステムは機能性を失いつつあります。
TOKYO町工場HUBでは、寸断された紐帯を各分野ごとに「町工場のHUB」を形成することで、新しい時代のものづくりのエコシステムを構築しています。例えば、機械関係の設計・開発部門の町工場を中心に、プレス、金属切削、溶接、金属研磨などの金属加工、射出整形、樹脂切削、樹脂研磨などの樹脂加工、さらには電子制御系、組み立て加工など、多種多様な機械生産のニーズに応えるHUBを形成してきました。
アクセサリー、雑貨、パッケージや伝統産業にも、それぞれのHUBを形成し、広く連携体制を築いています。
こうした町工場は相互の信頼関係で結びついているものです。その緊密なネットワークをベースに、より創造的にものづくりを推進できるようHUBの構成や取り組みをデザインしています。
株式会社 小川製作所

機械設計、精密部品加工、板金
機械設計・開発、金属加工全般をカバーする多様なネットワークを持ち、この分野のHUBとしての役割と機能を果たしています。ものづくり全般に対する豊富な経験と知識をもち、TOKYO町工場HUBの基幹となるクラスターをリードする重要なパートナーです。同社の取締役 小川真由氏は、さまざまな媒体でものづくりや経済について情報・意見を発信しています。
SHIINA FACTORY

金属アクセサリー製造・加工
TOKYO町工場HUBと有限会社椎名製作所とは、飛躍的に成長しているハンドメイド市場で活躍するアクセサリー作家・クリエイターに特化した製造・加工サービス事業「SHIINA FACTORY」を共同で立ち上げ、現在は椎名製作所が単独で運営中。アクセサリー製造に関わるクラスターをHUBとして再構築し、オープンなファクトリー機能を構築しています。
PACKAGE ART

パッケージを総合プロデュース
パッケージアート株式会社は、パッケージを通じて、多種多様な分野と業種に繋がり、ビジネスHUBとしてのポテンシャルを高く持っている町工場です。自社で企画・製造する工場を持つ上に、7000種類の関連製品を扱う商社でもあります。2020年以来、TOKYO町工場HUBは同社のビジネスプロデュースを手がけています。