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町工場の安全・安心はコストなのか?

安全・安心のコストの高さに悩む

経営者といっても、所詮人間ですので、やはり悩みもすれば、迷いもします。日々の業務でいくつもの判断をし、決断しなければなりませんが、時には厳しい課題に取り組まなければなりません。

例えば、工場の安心・安全を守ることは非常に大切ですが、かなりの費用がかかります。収益を上げる使命を負う零細企業の経営者としては、こうした出費は重く、相当な不安とストレスを抱えることにもなります。

国の法律で定めた規則に従うのは当たり前で、当社も法令遵守に相当な注意を払っていますが、決して楽なことではありません。本当に覚悟のいることです。同じ思いを持っている中小企業の経営者は多いのではないでしょうか。

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社労士の先生にきく

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法律を守らない企業は許されない

困った時、悩んだ時に相談する相手は、ご指導をいただいている社会労務士の先生です。あるとき、思わず自分の心の苦しい葛藤を打ち明けてしまいました。「同業者の中には国の法律を守らず、浮いた資金を利益に計上したり、新しい投資に回したりする人たちもいる。正直に規則を守ることは、本当に正しいことなのか。結果的に、正直者が馬鹿を見ているのではないか。」と。

これに対して、先生は穏やかに、こう諭してくれました。

高速道路の最高速度が80キロのところを、100キロで走っておいて「なぜ俺だけ捕まるのだ。みんな違反しているではないか。」と言っても仕方がない。バレなければ、何をやっても良いという理屈は、おかしいではないですか。

ここ数年、化学薬品を使う工場で「胆管ガン」が多く発生していて、企業の安心・安全・衛生のあり方が、すごく問題視されています。しかも問題とされているのは、インクの製造元・販売元ではなく、インク使用者(印刷業者)の管理がずさんなことです。

人間の命や健康を預かって仕事をする以上、法律を守らないで会社経営をしている企業は、許されないでしょう。

見えない危険に甘さが生まれる

印刷業というのは、一見、危険が少ないように見えてしまうところに、本当の危険が潜んでいるのです。例えばプレス工場や溶接工場では、刃物が使用されていたり、火花が飛び散ったりして、危険度が可視化されています。しかし、印刷工場の危険は、目に見えるわけではありません。

また原因と結果にタイムラグがあります。刃物で傷ついたり、火花で火傷を負ったりする場合には、その原因と結果を同時に認識できます。しかし、化学薬品の影響が人体に悪影響を及ぼすのは、ある程度の時間(場合によっては数年先)を経過してからです。

かつての公害がそうであったように、こうした特殊性が一部の経営者に危険やリスクに対する認識の甘さを生む背景となり、ずさんな管理を続けることに繋がっているのかもしれません。

「こうした経営者の怠慢によって被害を受けるのは、従業員だけではない」と、先生は指摘します。

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安心・安全はコストではなく資産

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「零細企業だから」という理屈は通らない

違反が見つかると、視察が入り、営業停止処分も考えられます。そうなった時に、どこに多大な迷惑が掛かるか。

仕事を出してくれている企業に対しては、その調達に影響を与えるだけでなく、問題のある会社と取引しているということでブランドにキズがついたりします。欧米では、消費者の不買運動に発展することも珍しくなく、企業にとって調達先の法令違反や人権侵害は大きなリスク要因であると認識されています。

つまり零細企業だから、法律に従わないで良いという理屈は通らない、ということです。先生によれば、しっかりした企業はリスク回避のため、労働者に対する義務をきちんと守っている会社を選別して、これからの仕事を発注するようになるということでした。

同業他社に国の安全基準を守っていないところがあるのであれば、なおのこと、小堀さんは、これからも自分と従業員の安全と安心をしっかり守ることで他社と差別化し、小さくとも光る会社を作って行くべきではないですか。

やはりこれは、目先の利益ばかりを考えていてはだめだなと、つくづく反省しました。従業員に長く安心して働いていただくことが大切だと、改めて思い至った次第です。

コストを資産として考える発想の転換

先生の言葉を言い換えれば、安全・安心はコストではなく、資産だということです。

確かに決算書上には、「安全・安心」は貸借対照表に載らず、あくまでもコストとして計上されます。コストが上がれば収益を圧迫するので、これを避けたいと考えるのは、人情でしょう。しかし、これはあくまでも会計上の処理の話です。

製造業にとって、もっとも大事な技術力も資産には計上できません。技術力があってもなくても、同じ機械を持っていれば、会計上は同じ価値です。従業員も、あくまでも「給与」という経費項目で一括されるだけで、質は問われません。しかし、この資産に計上されない「技術力」や、技術やスキルをもつ従業員こそが、本当は一番大事であることは言うまでもありません。

同じように「工場の安全・安心」ということも、それにかかる資金の支出は全てコストとなってしまいますが、工場を使う企業やその先の消費者が、安全・安心を基準に選別を行うのであれば、それはカネを生む大事な資産であると言っても良いのではないでしょうか。

消えて無くなるものではなく、会社に残るものです。

そう思うと、少し気持ちが楽になりました。

見えてきた効果

今でも経営の悩みは尽きませんが、社労士の先生のご指導もあり、従業員の安全と健康を守るという一点においては、はっきりとし基軸を持てるようになっています。スタッフと話し合いながら、小さな日々の改善を積み重ねています。

ご参照:健康を守る!から始まる女性が活きる町工場のつくり方

こうした中、先日、ちょっと嬉しいことがありました。これまで4ヶ月間に渡り、週2日で働いていた従業員(他社で3日仕事)が、当社で週3日働かせてほしいという申し出があったのです。小さなことではありますが、こうして戦力が増えることは本当に励みになります。

また、小堀加工所では、葛飾区のお仕事もいただけることになりました。第33回葛飾区産業フェアで、葛飾区リサイクル課が配る「ゴミ減量リサイクル推進ボトル」の印刷を当社がすることになったのです。これは、葛飾区プラスチック連合協同組合に入っている(株)佐藤化成、(株)西務良、当社の葛飾区の三つの企業によるコラボ作品です。まさしく、メイドイン・葛飾の製品となりました。

一緒に働く従業員や仲間たち、当社を利用頂いているお客様のために、これからも皆が誇れる会社になるべく頑張っていきます!

メイド・イン・葛飾区で製作した「ゴミ減量リサイクル推進ボトル」

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