われわれが欲しいものは最高の借り物ではなく、最低の独創であるべきだ。

白井晟一

ものづくり=製造業ではない

TOKYO町工場HUBは、新しい時代のものづくりエコシステムの構築に取り組んでいます。

現代において「ものづくり=製造業」ではありません。日本では工場や設備を保有し、新たな製品を作り出し、販売する事業者を「製造業」と分類しています。企画・デザインしたものを自社の工場で一貫製造、あるいは改良改善し、販売していくモデルです。この分類では、ソフトウエア開発を行うIT(情報通信)事業者は製造業ではなく、サービス業に分類されます。

しかし、工場を持たずに世界最大の「ものづくりカンパニー」になっているアップルの事例のように、ものづくりをリードするのは製造業とは限らず、ソフトウエア開発者がつくる情報家電、一般女性が考える革新的な下着(SpanxのSara Blakely)など、多種多様なプレイヤーによって担われています。

新しい時代のものづくりエコシステム

ものづくりは、新しいアイデアやイノベーションを考える「創造力」、それを形にする「技術力」、更にはそれを活用して社会課題やニーズに応える「応用力」の3つの力が相互に結びついて発展・進化します。

現代において特徴的なのは、私たちは「生存」のためだけに、ものづくりをしている訳ではないということです。モノが溢れている今、モノが必要な理由は、社会課題の解決のためであったり、人々の生活を豊かにする特別なニーズのためです。スタートアップには、その製品の「burning needs(強く切実な要求)」が問われますが、解決しようとする課題が何であり、その解決は本当に必要とされているのか、説得力あるストーリーが求められるにはそのためです。

このため、課題やニーズに近い方がものづくりの起点になることが多くなっています。新しい技術や素材を起点に製品の改良改善を行い、同業他社と競争することが主体だった時代は過ぎ去りました。

今、創造力を持つ人や企業であれば、誰でもどこからでも「ものづくり」が可能になっています。そうした多種多様なプレイヤーが、ダイナミックな離散集合を繰り返しながら新しい価値を作り、社会課題を解決し、生活の改善に応用しているのが「新しい時代」です。

Our Purpose

創造的な思考と情熱を解き放つ
Unleash Creative Mind and Passion!

創造力が活かされる社会に

TOKYO町工場HUBは、創造力を持つクリエイティブな人たちが自由自在に活躍できる社会を理想としています。人間の創造力こそが、社会の様々な課題を解決し、地球環境を守り、私たちの生活を豊かに、幸せにするものだと信じています。この創造力を解き放ち、自由にイメージをカタチにできる社会を実現したいと考えています。

新しい時代は、小さくとも戦える「個」の時代でもあります。「個」の時代では、大量生産大量消費時代の組織的な垂直型の協働に加え、水平的でダイナミックな協働が生まれてきます。極端に分業と細分化されたものづくりの要素を新時代に最適化するように再編成し、創造力の背中に翼をつける必要があります。

 

共進化を促す

ものづくりのエコシステムとは、新しいものづくりの時代にあって、創造力を取り囲むミクロ経済圏のことであり、様々なステークホルダーが競争と協働を繰り返しながら、全体として共進化(相互進化)する発展的なダイナミズムのことです。

共進化(Co-evolution)とは、生物学の用語です。一つの生物学的要因の変化が引き金となって別のそれに関連する生物学的要因が変化することだと定義されています。例えば、足の遅いシマウマはライオンに食べられてしまう。その結果、足の速いシマウマが生き残り進化する。その結果、ライオンも足が早くなる/強い爪を持つなどの進化が起きる。その繰り返しのことを指します。この例は食べる食べられるの競争ですが、相互に共生するものが共進化することも同じようにあります。

東京にエコシステムを育てれば世界につながる

ものづくりのエコシステムの構成要素と相互の関係性を整理したのが下図です。

但し、見方には注意が必要です。経済圏がローカルに止まる場合には十分ですが、ボーダーレスな新しい時代においては、このように一つの枠に収まることはありません。構成要素は、多数の次元や空間に分かれています。国も地域も、分野も専門も超えて存在します。そうでありながらグローバルにつながり、競争と協働を通じた共進化が進みます。

逆に言えば、東京にいても既にグローバルにつながっているのです。TOKYO町工場HUBが構築している新しい時代のものづくりエコシステムとは、東京に共進化する環境を構築することで、世界のエコシステムの文脈にも自然とつながっていくミクロ経済圏です。

町工場のHUBは、そのような共進化を促すエコシステム内の装置として機能します。HUBとなる町工場は、新しい価値を生み出す創造力のある企業やスタートアップにプロの技術力を提供することで、相互に発展する機会を作り続けることができます。さらに、そこから関連する工場や職人に横展開することで、有機的なものづくりネットワークを形成することになるのです。

共進化の事例:SHIINA FACTORY

アクセサリー専門の金属プレス加工事業者である有限会社 椎名製作所は、業歴70年を超える老舗の町工場です。2018年よりTOKYO町工場HUBとのパートナーシップで小規模事業者や個人作家を対象とした加工サービス(SHIINA FACTORY)を開始しました。

工場もクリエイターも進化

近年、自らデザインしたアクセサリーや雑貨をネットやイベントで販売する小規模事業者や個人作家が急増しています。中でも高い人気と収入を得る人たちは、高い品質と技術力を持つ職人や工場を求めていますが、対応できる工場が国内にほとんどないのが現状です。

SHIINA FACTORYは、そのギャップを埋めることを目的に事業を開始。ユーザは日々増え続け、対応する工場の設備や体制も充実。創造力が技術力と出会い、共進化する典型事例となっています。