ツナグツムグ物語 第4話:最初の試練

壁に直面

正解のない問いと向き合う

ワンストップ・マーケテイング講座は、ゴールデンウィークを挟み、開始から約1ヶ月が経過し、「はんこ屋さんごっこ」をリニューアルする商品企画にツナグツムグのメンバーたちが試行錯誤を繰り返しています。掘り下げたり、広げたり、そこには新しい発見や学びがあれば、混乱やとまどいもあり、個人としてもチームとしても次のステージに向かう出口を模索しているところです。

こうした取り組みが難しいのは、正解が見えないし、あるかどうかもわからないところ。考えだすとあれこれと気になったり、行き詰まりを感じたりします。アイデアや考えが拡散するかと思えば、一定の枠に囚われて抜け出せない。正しいと思ったことも、翌日には何か間違ったようにも感じてしまう。何か浮ついた感覚を持ちながら、不安な思いにも襲われます。

どんな用途やシーンで使ってもらえば良いのだろうか。それぞれが調べたり、アイデアを出したり、出せなかったり。チームの話し合いが続いています。絞られていくようで、ぼやけていくようで。捉えどころのないやりとりに、どう手をつけて良いか迷う。無理ではないかと諦めの気持ちもこみ上げてくる。

本当に辛い。でも、これこそが顧客創造の冒険。回答のない問いに向き合うこと、その不安感と付き合うこと、そのプロセスを楽しむこと。その先に、何らかの光が見えるかもしれない。自分と仲間たちの力を信じて進む旅です。

個人として、チームとして、どんな出口を見いだせるか。これからが正念場です。

株式会社新東通信 ビジネス開発本部 メディアプロデュースグループ 未来ショッピング プロジェクトリーダー 祐川 幸子さん

クラウドファンディングはマーケティング

第4回目のセッションは、銀座の中心にある株式会社新東通信の会議室を舞台に、同社の祐川幸子さんを講師に迎えて開催。テーマはクラウドファンディング。ビジネス開発本部で数々の新規事業の立ち上げを行ってきた祐川さんは、現在、日本経済新聞社が主催するクラウドファンディングプラットフォーム「未来ショッピング」を運営するプロジェクトリーダーとして、100件を超える案件の組成に関わっています。

今回は、クラウドファンディング実践に向けての重点ポイントを中心に解説いただき、グループでのワークショップをファシリテートしていただきました。

祐川さんが特に強調していたのはクラウドファンディングの意義。「資金調達の手段であるよりも、マーケティングの手段である意義が大きい」と説明されています。テストマーケティング、プロモーション、プランディングなどの目的のために、オンラインで支援者=ファンを募り、そのファンを通じて情報拡散していくデジタルマーケティングのツール。それがクラウドファンディングであると。アメリカの本屋では、クラウドファンディングの本はマーケティング関連の棚に置かれているそうです。日米の違いなども、丁寧に解説いただいています。

タイトルが9割

実践面についても、成功のためのポイントや起案書の作成の仕方など、実際に数多くの案件を組成してきた経験からお話をいただき、たくさんの学びがありました。成功に導くポイントにはいろいろとあるけれど、まずはメインの写真1枚とタイトルが最も大事だということです。見た人に「もっと知りたい」と興味や関心を持たせることができるかどうかに成否がかかっていると。クラウドファンディングは「タイトルが9割」と言われているそうです。

30字から50字程度のタイトルを魅力的に表現できるかどうかは、ひとえに基本的な商品のストーリーができているかどうかということに尽きます。その骨格として「5W2H1M」のコンセプトを学びました。何のために(Mission)、どんなもものを(What)、どのように(How)など、基本的な問いかけに回答を見いださなくてはいけません。グループのワークショップでは、この作業を各自が行い、それをまとめていくプロセスを祐川さんにリードしていただきました。

イメージを形にする難しさ

この作業は、単純ではあるものの、やってみればわかるのですが、非常に難しいのです。漠然と感じたり、イメージしていたものを明確な言葉で表現し、それをチームで共有する作業は並大抵なことではありません。今回のワークショップでは、自分たちのコンセプトが固まっていないこと、まだアイデアが漠然としていて、チームで共有できていないことが浮き彫りになりました。収束を見ることができずに、今回はセッションが終了しました。

ただ、チームの多様性が生かされるのは、まさにこのような作業においてです。それぞれの個性の違い、強みや弱みの違いが、違うからこそ補完しあい、あるいは相乗効果をもたら可能性を秘めています。自分の思ってもいなかった言葉や考え方に接したり、違う角度から光が当てられたりすることで、自分のイメージもはっきりすることも多いのです。

無理にまとめようとせず、終始チームの自力に期待する祐川さんのファシリテーションは本当に素晴らしいものでした。

抱える想い

セッション終了後は、一部のメンバーで有楽町の中華料理屋へ流れていきました。ビールを飲み、餃子をつつきながら、それぞれが自分の抱えている思いを語り始めました。

未知な世界に挑戦するということは、様々な障害や壁と向き合うこと。その障害は外部にあることもあるけれども、自分自身にもそれを見いだす。自分をちっぽけな存在に感じたり、孤独を感じたり、わくわくを感じられなくなったり、フラストレーションを感じることも多いはず。実際に、そんなつぶやきや声も聞かれました。

本当に悔しいのだと思う。何のためにやっているのか。これを続ける意味があるのか。そんな自問自答を繰り返す。でも本プログラムに、その回答は用意されていません。なぜなら、答えよりも問いかけが大事だから。その問いと対峙し続ける先に答えがあるかもしれないけれど、試行錯誤し、悩み苦しみ、助け合うプロセスにこそ、本質的な学びがあると信じています。

真ん中が株式会社安心堂の丸山有子さん

リーダー決定!

話し合いの結果、チームとして「この人を幸せにしたいと心から思える人物像を決めよう。その人物像を軸に考えよう。」という方向で進めることは決まりました。

ひとしきり皆で熱く語り、涙を流し、大笑いした後、最後にツナグツムグのリーダーには、畳屋さんの女将であるAさんになってもらうことで、その場のメンバーの意見が一致しました。Aさんには想いの強さがあります。想いが強いから、一番深く悩み、苦しんでいます。だからAさんの言葉には温度があるし、説得力がある。そういう人のために、一生懸命に努力できることは、きっと幸せに違いない。

ツナグツムグは最初の壁の前で足踏みしています。「私は本気でこのプロジェクトを成功させたい」(安心堂の丸山有子さん)。この覚悟にチームは応えることができるのか。ものがたりはつづく。

スラックレールの高島さんにもご参加頂きました!