ツナグツムグ物語 第5話:人の心を動かす

映画監督に学ぶ映像表現

人の心を動かす快感

人の心を動かすって、とっても難しいし、スリリングなものかもしれない。でも、人を笑わせたり、考えさせたり、泣かせたりすることは、それ自体が快感かもしれない。太古の昔から人類は絵を描いたり、役を演じたり、音楽を奏でてきたけれど、考えてみると、これは人間の基本的な欲求のひとつなのかもしれない。アーティストは表現することの「快感」に人生を賭けているし、それを受け取ることで私たちの生活も豊かになったり、癒されたり、勇気づけられたりもする。

だからと言って「表現する者=アーティスト」では必ずしもない。私たちは日常的に表現することを求められているし、ビジネスは常に自己表現の舞台である。買うという行為には、理屈ばかりでなく、エモーショナル(感情的)な要素が多く含まれている。ならば、顧客創造の冒険とは、人の「買いたい」という気持ちにスイッチを入れることへの挑戦に他ならない。

全身鳥肌の面白さ

ワンストップ・マーケティング講座の第5回目は、巣鴨駅近くにある空きスペース(かつてはワインバー)をお借りして、映画監督の諸江亮さんに映像表現を学ぶセッションを行いました。セッションの題名を聞いただけでワクワクしますが、実際の講義は「恐怖の悲鳴(?)」があちこち上がるほどに面白く、大盛況となりました。諸江監督の得意分野は、ホラー映画!全身鳥肌を立てながら、面白おかしく映像表現の楽しさや奥深さに浸った2時間でした。

ツナグツムグのメンバーたちは、クラウドファンディングの実践に向けて、いよいよ価値表現のフェーズに入ります。

理屈で相手を説得するのではなく、商品やそれにまつわるストーリーを紡いで相手の心を動かすこと。言葉や図、映像を組み合わせながら、商品が持つ魅力をいかに語り、伝えていけるかが問われます。中でも映像による表現は、百聞は一見にしかずのことわざ通り、非常に大切。その映像表現を新進気鋭の映画監督から直接学ぼうというのだから、楽しくないはずがない。最高でした。

諸江亮/映画監督

映画監督・ MVディレクター・フォトグラファー2005年「死づえ-噂霊-」で映画監督デビュー。2006年「残された光たち」が海老名プレミアム映画祭にてグランプリを受賞。その他、「アニと僕の夫婦喧嘩」「カゲノワズラ」「FEEL」「隣の君」「リアル・ホラー・ストーリー」など数多くの作品を監督。MVでは、どぶろっく「やってはいけない!」を監督、音速ライン「ウーロンハイ」は撮影を担当。2017年、雑誌「10asia+Star JAPAN」にて韓国の男性アイドルグループMYNAMEのセヨンのフォトシネマを撮影。2018年 『スリーアウト! 〜プレイボール篇〜』

今年3月16日(土)に全国ロードショーとなるオムニバス映画『Short Trial Project 2018』に、これから最も期待される映画監督の一人として作品を提供

台本をもとに写真を撮影する「フォトシネマ」も制作し、発表している。
諸江亮フォトシネマ:https://ryomoroe.myportfolio.com/projects

映画を観ることで観客の人生を変える

映画を作る目的を問われ、諸江監督は「映画を観ることで観客の人生を変えること」と答えています。見終わった後に、その人の生き方が変わっているような映画を作りたいと。

監督が今回のセッションに用意したのは、その映画作りのプロセスを一端を、台本と実際の映画を比較しながら解説し、全編を観ていくという超豪華な企画。

諸江監督の短編ホラー作品「コトリコ」を題材に、台本を読みながら、少しずつ映画を観ていくという趣向。「解説」を挟みながら観ていても、映像とストーリー展開には思わず「ギャーー!!」と声を上げてしまうほどに怖い。「怖い」という感情引き出すのも表現。参加者たちはまさに心を奪われてしまいました。

先を読ませない

印象的だったのが「先を読ませない」という方法論。先が読めないから、人はハラハラしたり、ドキドキする。先が読めてしまったら、その瞬間から観客は退屈してしまう。「空気を変える」ことの大切さも教えて頂きました。

また、「リアクションを先に見せる」という手法は面白かった。まずは恐怖に怯える人のリアクションを見せた上で、その人の目が見たものを見せていくという表現方法。人の想像力を掻き立てるのに絶大な効果を発揮しています。人の心を動かすのは、受け手側の想像力なのだと改めて納得しました。

監督からは、撮影の裏話などもいろいろとお話しいただき、それはそれは楽しい時間となりました。

「コトリコ」の全編はお見せすることはできないけれど、こちらに予告編の動画あるので、その怖さのさわりをご覧になってください。ああ、今、思い出しても怖い。。。

まなぶは、まねぶ

監督とのフリーディスカッションでは幅広いテーマで質疑応答が行われ、時間を大幅に超過するほど盛り上がりました。

中でも諸江さんが強調していたのは、表現力を磨く方法として、真似をすることの大切さ。「まなぶは、まねぶ」ということを教えてくださり、著名な役者や映画監督の言葉をたくさん引用した資料も用意してくれていました。真似ることから個性が生まれる、他人からどんどん吸収しようと励ましてくれました。

「ああいう役者になりたい」、最初はそうやって観て覚えました。役者は「観て覚える」が基本です。結局は誰かの真似から始まります。電車の中で面白い喋り方の人がいたら、その喋り方をインプットする。面白い目の使い方をする人がいたら、その目をじっと見る。そうやってイメージで食らいついていきました。(仲代達矢)

映画監督からこんな風に直接映像表現を聞ける機会なんて滅多にないけれど、諸江監督には、多忙な撮影スケジュールの合間にセッションを持って頂き、心から感謝しています。

本当にありがとうございました!

幸せにしたい人

ツナグツムグの商品企画は、まだ試行錯誤を続けています。前回のセッションから今回に至るまでに、「自分は、こんな人を幸せにしたい」というイメージを各自が出していく作業をメンバーがはじめました。

「幸せにしたい」というアプローチは、いわゆるマーケティングの手法でいうところの「ペルソナ」とは異質なものですが、これはツナグツムグという個性から導かれた方法。オーソドックスなものではないけれども、チームは自分たちのコンセプトの根本的なところをまずは手探りしているようです。

もうすぐ飛び立ち!

コミュニケーションのツールとして使用しているSlackでは、日々、メンバー間のやりとりが行われています。

足踏みしているように見える「はんこ屋さんゴッコ」の商品企画ですが、実はのイメージの広がりも深さもすごく発展してきているのです。いろんな想いやアイデアが蓄積されてきていて、まだ形こそはっきり見えないものの、すでに魅力をたくさん孕んでいます。

「僕たちには翼がある」と言って始まったワンストップ・マーケティング講座。次回が講義フェーズの最終回。日ヶ久保香さんによるストーリーテリングのセッションです。これが終わると、いよいよチームの実践が始まります。

ツナグツムグが飛び立つ日は、もうすぐそこです。