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ものづくりを生み出す力は「気づき」と「挑戦心」

 

ものづくりの創造性の源泉

私たちの生きる製造業では、作ったものを販売して、収益を上げることが事業の目的となっており、モノは売れてこそ価値があるとされています。売れないものをいくら作ったところで、ビジネスとしては価値がないものと評価されるのです。

ですから、新商品開発においては、消費者のニーズや市場の動向などを十分に調査・把握し、売れるものを作っていくことが、もっとも大事な要件となります。技術の高さを示すだけではなく、いかにユーザのニーズに的確に応えるかという課題に、日々製造業は取り組んでいるのです。

モノ消費から、コト消費へと移行しているという時代の流れも、こうした社会や市場の求めていることなのだと思います。

しかし、ものづくりの現場に身を置くものとしては、新しい製品が生まれるダイナミズムというものは、それだけでは捉えきれないのではないかと思っています。

経済合理性を追求するビジネスの世界の中で、「売れる、売れない」という基準が大事であることは言うまでもないのですが、本質的にモノを作るという創造性は、それとは別次元で生まれてくるものだと感じています。

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0.2ミリ幅の極細輪ゴムの誕生秘話

始まりは一本のクズ糸への気づき

当社では、幅0.2ミリのシリコン製の極細輪ゴムを開発しました。この極端な細さを抜く技術は、型抜き加工の極限を行くものです。実際、どこで調べても、これほど細い輪ゴムは見つかりません。他にはないので、インターネットで「極細輪ゴム」と検索すると弊社が必ず上位に出てきます。 

この極細輪ゴムを製作するきっかけとなったのは、会社の中に落ちていた1本の細い紐のようなものでした。これは何だろう、と見てみると、それは型抜きの作業工程で出てゴミでした。

こんなに細い紐ができるのか、という気付きは、すぐに「これを作ってみたい」と感じる感覚に繋がりました。これは、ものづくり屋としての職業病のようなものかもしれません。

とにかくこの極端に細い1本のゴム紐を型抜きで実現したいと思い、すぐに製作に取り掛かりました。

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試行錯誤の連続

早速、当社のスーパープレス機(*)でやってみると、意外なことに難なく作ることができました。もちろん、高い技術力が必要ですが、同じ機械を保有している会社であれば、同じようにできてしまうでしょう。これでは面白みがなく、希少価値もありません。

(*)ご参照:型抜き加工は機械と技術と人と共に

そこで、これを輪にして抜けないだろうかと、思いつきました。細い一本の紐を抜くことは容易であっても、両端が繋がっている輪にして抜くことは、実に難しい作業なのです。

これは、例えばリンゴの皮むきを想像すればわかりやすいかもしれません。ナイフで薄い皮を削ることは普通にできますが、輪切りにしたリンゴの皮の部分だけを切れ目なしに上から打ち抜くイメージをしてみてください。簡単ではないことが容易にお分かりになると思います。

少しの歪みもない状態に持って行くのに、何度も繰り返し実験を重ね、とてつもない時間を要しました。しかし、技術が困難であれば困難であるほど、職人魂に火がつくものです。あきらめずにチャレンジを続けた結果、ついに0.2ミリ幅の極細輪ゴムが誕生しました。

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「くもの糸」という商品名で発売中

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従来の価値観の反対側をあえて探る

実は、極細輪ゴムには輪ゴムとしての性能はほとんどありません。輪ゴムとしては落ちこぼれなのです。強く引っ張れば切れてしまい 細い分、何かを留めようとしてもゴムの力が弱く、性能としては普通の輪ゴムの10分の1ぐらいしかありません。

しかし、あえてこのような極細輪ゴムを作ったのには理由があります。ヒントとなったのは、薄く割れやすいガラスのコップが普及した経緯です。

従来、ガラスのコップは、ある程度の厚さを持ち、重厚感を出した方が高級とされていました。一方、薄いグラスは、材料費が節約できる反面、割れやすいという欠点があり、価値は低いものとされるのが一般的な評価でした。

しかし、ある時、薄いグラスで飲むとビールが格段においしくなることがわかったのです。やはり、おいしいビールが飲めるに越したことはない。すると見向きもされなかった「薄さ」にも価値が生まれます。しかも「割れやすい」ので注文が殺到し、これを最初に売り出した会社は、大成功を収めたそうです。 

極細輪ゴムにもその可能性を感じました。輪ゴムとしての性能をあえて落とすことで、新しい用途や隠れているニーズに応えることができるかもしれないと思ったのです。従来の価値観の反対側をあえて探ってみようと。

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圧着力が弱いので長時間のマスク着用でも痛くならない

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モノが生まれる契機

「気づき」と「チャレンジ精神」

製品というのは 自然界に急に生えてくるものではありません。この世の中にある全ての「モノ」は、必ずどこかで誰かが作っているのです。作る人の「気づき」や、それを実現しようとする「チャレンジ精神」があって初めてモノは生まれてきます。この法則は太古の昔から絶対に変わりません。これからも変わらないでしょう。

極細輪ゴムも、ものづくりにおいて重要な「気づき」と「チャレンジ精神」に、受け継いできた技術力がうまく融合してできてきたものです。

ものづくりの楽しさが基本

そしてなぜモノが生まれるのかというと 不便を解消するために作られてきたものが多いということもあります。この不便を感じるというのが気づきになるのです。そして不便を感じたら、すぐに改善しようとするチャレンジ精神があればこそ、ものづくりは楽しいと私は思っています。

モノを売って生計を立てていかなければなりませんが、自分で作ったから、新しいものを作ったから、子供たちが一生懸命作ったから、みんなで一緒に作ったから「ものづくりは楽しい」。

ものづくりをする一人として、より多くの人にこう感じて欲しいと思っています。

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有限会社 精工パッキングへのお問い合わせ

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