型抜きは最後の仕上げに命が宿る
一瞬の美技を連続して行う職人技
先日の第28回機械要素技術展では、大勢のみなさんが当社の出展ブースにお立ち寄りいただき、どうもありがとうございました。
幅0.3ミリの極細輪ゴムを中心にご覧いただきましたが、その新感覚にたくさんの方々からご好評をいただきました。特に、これが型抜き加工でできたことには皆さんが驚かれたようで、「すごい!」という言葉を何度も聞くことができました。型抜き加工の奥深い可能性を、多くのみなさんに知っていただけたのは本当に幸せなことでした。
こうした型抜きには、綿密な前工程での準備と、数え切れない工夫とノウハウが詰まっていますが、1回1回の型抜きそのものは一瞬で終わる作業です。それはまるでイチローが外野のフライボール捕球をいとも簡単に見せているのと同じように、外見上はシンプルな作業の連続に見えます。しかし、無数の繰り返しを同じ高い精度で連続して行うことは極めて難しく、それはまさに美技と呼んでも差し支えのないものと言えましょう。
特に最後の仕上げの技術は、製品の質を最終決定するものであり、そこに製品の命が宿ります。
丸穴の型抜きにおける仕上げ技術の変遷
丸穴を抜く場合には、寸法変化など様々な点に気を付けなくてはなりませんが、最後の仕上げの方法も大きなポイントになります。特に連続して繰り返し作業を行うには、丸穴の刃の中に製品や抜きカスが詰まってしまっては仕事になりません。これは作業の遅延をもたらすだけでなく、製品の精度にも大きく影響を与えてしまうからです。
ご参考:丸穴の型抜きが職人の腕を試す
その対策として、昔は硬めのアメゴムやシリコンゴムなどを専用の小さなハサミで1個ずつ切り出し、「跳ね出しゴム」と呼ばれるパーツを作って穴に詰めていきました。これで製品や抜きカスを跳ね出していたのです。
その後、スプリング丸刃という刃が開発され、バネの力で製品や抜きカスを出すことができるようになりました。これにより、跳ね出しゴムが不要となり、作る手間も省けたので楽にはなったのですが、このスプリングがバネ式になっていてコストが非常に高くなります。しかも鉄で出来ているので柔らかい材料を打ち抜くときは完全に変形してしまい、商品にならなくなってしまいました。
そこで登場したのが「サイドパンチ丸型」という刃型です。 従来の刃型と違い、1回1回跳ね出しをするのではなく、溜めて一気に吐き出すことを可能にしました。抜かれた製品や抜きカスは、刃の中に食い込んでいきますが、刃のサイドに「吐き出し口」と呼ばれる穴を開けることで、取り出しを簡単にしたところに改善があります。
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このサイドパンチの登場により丸の抜き加工はだいぶ簡単になりましたが、跳ね出しゴムを手作りする技術は、残念ながら淘汰されて行ってしまいました。伝統的な技術がなくなっていくのは、少し寂しい気もします。
極細輪ゴムは丸穴の型抜き加工の極み
丸穴一つをとっても型抜き加工技術の難しさは語りつくせません。材料の厚さ、硬さ、材質の癖、抜き上がり状態、クリヌキがよいか?サイドパンチのほうがよいか?お客様がどのようにして穴を使用するのかと考えながらものづくりをしています。
そして、丸穴を打ち抜く技術の一つの極み・到達点が、まさに幅0.3ミリの極細輪ゴムなのです。これは内径と外径の差を利用した非常に難度の高い丸穴の型抜き技術を応用したものです。この精度で丸穴を打ち抜く技術を持つところは、おそらく日本でも精工パッキングぐらいだと思います。これは丸穴一つにも真剣に取り組んできた技術の積み重ねです。
これからも伝統的な技術を生かし、新しい挑戦を続けたいと思います。
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