型抜き加工の「寸法」を巡る謎の話
謎の事件の発端
完全に図面通りに作っていたのに、製品が縮むという珍事件が起きたのは、今から40年前のこと。発端は、厚さ2mmのスポンジを300mm x 50mmの変形した形状で抜くという 型抜き加工の依頼を受けたことでした。
図面を見る限りでは加工に全く問題があるとは思えず、短納期だったため、そのまま図面通りの型を外注しました。「型」製作の間に、ゴムスポンジ材料を材料問屋に発注し、急ぎの対応を依頼。型が仕上がったところで、試しにゴムスポンジ材料で打ち抜き加工し、寸法検査を行い、図面通りに仕上がっていることを確認。そのまま、量産に入り、製品を納期通りに納入できました。
一仕事を終えてホッとしていると、納品して一週間後に納入先の社長から一本の怒りの電話が。。。。「精工さん!スポンジの寸法が違うよ!」
なぜ寸法が変わったのか
型抜き加工のポイントして「寸法公差」というものがあります。「寸法公差」 とは、図面の寸法に対しての許される誤差の範囲のことで、大きさや厚みによって変動しますが、1mm以下の寸法の場合、およそ0.02〜0.05mm程度。10mmぐらいになると約0.05〜0.1mm程度で、特殊な場合をのぞいて、寸法公差が0.5mm以上ということはあまりありません。そのような厳しい寸法条件であっても、今の日本の技術力では、全く問題なく量産することができるのです。
ところが、40年以上前のこの事件では、納入した製品が、何度計っても3mm〜5mmほど小さいというのです。早速、納入した製品を送り返してもらい、自分たちの目で確認すると、やはり言われた通りに寸法が会いません。翌日からその原因究明の検証を開始。
よく調べてみると、製品の寸法の違いは一律ではなく、誤差が3mmから5mmの範囲に分散していました。一律に同じ誤差で寸法が違っているのなら、加工工程上の問題である可能性がありますが、3mmから5mmの間でランダムに分散しており、中には寸法公差の範囲内に収まっているものもありましたので、加工工程の問題ではなさそうです。また全て縮小しており、大きくなっているものはなかったことも気になりました。
謎の解明
最初に疑ったのは「型」でした。外注した型の製作所に確認をとり、製作した型を使って堅めのボール紙を一つだけ抜き加工し、寸法検査をしてみましたが、それは完全に図面通りに出来上がっていました。「型」が原因ではなさそうです。
そこで、次に材料を調べてみました。材料仕入れ問屋に問い合わせてみると、次のような回答が返ってきました。
ゴムスポンジというのは、いわゆる「発泡品」であり、読んで字のごとく「泡」のような空気の層でできている。ゴムスポンジを作った直後というのは空気が膨張していて膨らんでいるが、時間経過とともに縮みがおきてくる。スポンジ製造所では、その辺りのことは熟知しているので「強制収縮」という技法で、一旦出来上がったゴムスポンジを収縮させてから出荷する。しかし、それで完全に縮みが終わるわけではなく、時間が経過するに従い、徐々に縮んでいくものである。
そしてもう一つ、ゴムスポンジの厚さに問題がありました。発注をかけたのは2mm厚ですが、原反(加工する前のロール状の)材料が30mm厚であったことです。30mmを2mmにするスライス加工では、漉き加工をする必要があり、30mmの状態で強制収縮を行っても、2mm厚にすると再び収縮が始まってしまうのです。
失敗を重ねながら日々進化を続ける
同じ材料で収縮が完全に終わっているスポンジ材料を同業者から譲ってもらう対策を取り、どうにか問題を解決。短納期で、急いで対応したことと、知識不足が失敗の原因でした。
材料の縮みというのは、スポンジだけの問題ではありません。布や革なども同様です。縮む大きさだけではなく、縮む方向という問題もあります。堅さや厚みによって縮み方も様々です。
40年以上も前、精工パッキングの草創期で、技術の知識や経験がまだ浅かった時代のことです。今では、スポンジだけでなく、多様な材料を扱い、縮みに関する深い知識とノウハウを蓄えています。
新しい挑戦には失敗はつきものですが、恐れずに挑戦し、失敗を重ねながら日々進化していきます。
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