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世界のものづくりはどこへ行くのか

グローバルな工業生産の潮流の変化

産業革命以降、世界のものづくりは、その中心地を変えながら発展してきた。アメリカは1920年代から常に製造業の中心にあるが、1960年代以降は、日本が高度経済成長によって世界の工場へと成長し、80年代まで世界のものづくりを牽引してきた。日本の勢いを奪う形で台頭してきたのが台湾や韓国等の新興国であり、90年代以降から中国が世界の工場の地位を占めてすでに久しい。

しかし、ものづくりを巡る潮流は絶えず変化しており、今も新しい流れが生まれようとしている。その行き先はどこに向かっているのだろうか。

新興国の国内生産の増加

IoTやAI(人工知能)を使った新しいものづくりや、第4次産業革命といった話題が華やかであるが、世界のものづくりの底流では、中国等からの輸入一辺倒であった新興国において、国内市場向けに国内生産を拡大する動きが進展している。

米国のCIA(米国中央情報局)が発表している世界の工業成長率のランキングで上位を占めている国で目立つのは南アジア諸国(インド、バングラデシュ、パキスタン)や一部の東南アジア(ベトナム、フィリピン)の国々である。総人口は5カ国合わせて18億人超、実に世界人口の26%を占める巨大市場で、いずれも高い成長率を示しており、ものづくりが大きく成長している様子が伺える。

国名 工業生産高成長率
(2016年)
ランキング 人口
(百万人)
バングラデシュ 8.4% 9位 156
インド 7.4% 13位 1,266
ベトナム 7.0% 15位 95
パキスタン 6.8% 19位 202
フィリピン 6.8% 20位 103
中国 6.1% 26位 1,374
日本 0.5% 164位 127

(出典:Central Intelligence Agency, The World Factbook, Industrial Product Growth Rate 2016)

バングラデシュでは、電気や道路などのインフラが整備されてきたことを契機に冷蔵庫等の家電製品やオートバイなどの国内生産が急速に伸びてきている。またインドでは、モディ首相が「Make in India(インドで作ろう)」というスローガンの下、海外から国内への生産拠点の誘致を強力に進めている。現地の新聞によれば、ロールス・ロイスがインドの企業と組んで、国内初の小型旅客機用のエンジン生産を検討しているとのことで、「従来の安価な製品を安価な労働者で」という図式だけでは収まらない動きも活発化している。

東京の町工場にビジネス・チャンスはあるか

こうした中、上記の表の通り、日本の工業生産高の伸び率は0.5%(世界ランク156位)に止まり、ものづくりの大きな潮流から取り残されている感は否めない。特に一般の町工場にとって、海外の市場や生産は、縁遠いものに見えるだろう。しかし、本当にそうなのであろうか。

もちろん、一町工場が単独で海外に進出したり、いきなり現地工場を持ったりということは容易ではないし、薦められない。国際ビジネスは、驚きと落とし穴だらけで、地雷原を歩くようなものでもある。それでも、海外とのビジネスの可能性をつぶさに見ていけば、リスクや金銭的な負担を最低限に抑えつつ、段階的にビジネスを広げていく方法もあるはずである。

いずれ一つ一つのオプションを検証していくので、ここでは詳しくは述べないが、東京の町工場は世界のものづくりの潮流の変化の中で、独自の強みを活かしたビジネスを切り拓ける可能性がある。なぜなら、上記に述べた国々の最大の課題は、自国に「町工場」がないことなのだから。結局、最後は「人材」であり、人を育てるには長い時間を要する。世界のものづくりの中で、東京の町工場が独自のポジションをとって競争する余地は、十分にあると思われる。

この機会を生かすも殺すも、知恵と工夫次第なのである。

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