生き残る町工場、消えゆく町工場

生き残る町工場、消えゆく町工場

 

淘汰されるべきは、淘汰されて然るべき

町工場がこれからの時代を生き残るためには何が必要でしょうか。どうしたら価値のある企業として生き残り、産業を発展させていくことができるでしょうか。

前回のブログでは、これからの町工場は人にしかできない仕事を核心に置くべきだと書きました。機械化や自動化の技術が急速に発展する中でも、各工程における熟練技術者の役割は依然大きく、米国などにおいては、需要に対して供給が追いつかない状況であることも解説しました。町工場が、その強みを活かすためには、これからも人の育成がとても大切です。

前回ブログ:町工場は「人」にしかできない仕事を核に

一方、製造や技術のフィールドでビジネスをする以上、「技術の高度化=人類の進歩」という意味で自動化、人工知能(AI)化の潮流は必然的であり、当然推進していくべきことなのだとも思っています。 仕事が奪われるという理由でこの流れにストップをかけるのではなく、伸ばしていく立場としてふるまうべきなのではないか、という思いがあります。 実際のビジネスとしては、伝統的な加工技術を多く使用している立場として、少し矛盾した思いなのですが。

別の言い方をしますと、私は町工場の経営者の一人として、現在の町工場の在り方や状況そのものを全肯定している訳ではないのです。つまり、今までの方法で、このまま我慢していれば、仕事が勝手に舞い込んでくるように状況が変わる、と勘違いしてはいけないと思っています。

AIや自動化によって、仕事を奪われる町工場や労働者が出てくるのは事実ですが、技術の進歩によって産業が盛衰するのも必然的なことです。町工場の経営者や従業員は、その変化を単に憂うのではなく、事業を常に見直し、技術の高度化を図って変化に対応し、競争力を維持することが必要です。昔ながらの町工場の事業や技術には愛着がありますが、淘汰されるべきものは淘汰されて然るべきだとも思っているのです。

小川製作所のプレス機
長年の使用で愛着のあるプレス機

町工場の競争力を高めるために

では、町工場はこれからの変化を生き残るために、何をしていけば良いのでしょうか。まずは自分の体験からお話ししたいと思います。 

私の実家は葛飾区の板金と製缶を主とする町工場で60年前に祖父が創業し、父が引き継ぎ、今、取締役という立場で私が経営しています。大学卒業後、富士重工(現スバル)に就職し、新型航空機の開発部門を担当していましたが、家業を継ぐため職を辞そうと決めた時には、板金や製缶の仕事だけではとても事業を継続できる状況ではありませんでした。

そこで私は、当時最先端の技術であった同時5軸制御の金属切削加工の技術を習得すべく、その設備をもつ近所の切削加工の町工場に見習いに出て、4年間技術の習得に努めました。ここでは最先端の金属加工技術に向き合う日々を送りましたが、それ以上に自分が引き継ぐ実家の町工場を新しく発展させるための様々な知識や経験を得たことも大きかったと思います。

結果的に、今、当社(株式会社小川製作所)は全く違う業態として生まれ変わっています。従来の板金と製缶の仕事は続けてはいますが、今は「ものづくりインテグレータ」として、50社以上の製造パートナーと提携し、設計から加工や組立に至るまでワンストップで依頼主の要望に応える会社に変貌しています。私が見習い先から家業に戻ってきてから5年が経ちますが、おかげさまで売上は大きく改善し、今も成長しています。

しかし、ここに至るまでには、自社の危機と正面から向かい合い、たくさんの痛みを伴う選択をし、常に付加価値を上げる努力を続けてきました。決して楽な道のりではありませんでしたし、今も新しい挑戦を続けています。

小川製作所の看板
看板は昔のままだが、業態は大きく変化している。

ゾンビ企業を排し、新しき芽に投資せよ

こうした経験をしてきた私としては、本来は淘汰されるべき町工場が、補助金などに頼ってゾンビ企業のごとく生き永らえることを決して良いとは思いません。補助金を受けることを前提に、現状維持の経営を続けるような企業が生き残ることは、新しく発展しようとする産業の芽を摘んでしまっているようにさえ感じています。

誤解のないように言いますが、私は補助金が悪いと考えている訳ではないのです。むしろ、そうした補助金によって、資本の少ない町工場が新しい挑戦をしていくことは必要だと思っています。しかし、それは企業の利益の穴埋めのために使われるべきではなく、受けた企業が付加価値を高くし、産業全体が発展することに使われるべきだと考えているのです。

例えば、毎年のように設備導入目的の補助金を申請している町工場もあります。結果的に、本来の設備費用から大幅に割り引かれた価格で最新設備を導入できるわけです。これを製品の付加価値を上げるために活用してくれれば良いのですが、節約したコストを前提に受注単価を大幅に下げて売り上げ規模を維持しようとするのは間違っていると思います。

これは単価を下げることによってしか成立しないビジネスモデルにしがみついているわけです。 そういった企業は、本来のニーズに合わせた企業規模への縮小を図るなどして、業界全体として再構築されなければならないと思います。 ゾンビ企業の存在により、業界としての過当競争に歯止めがかからず、全体として没落していくことになりかねないという危機感を強く持っています。

苦しくても付加価値を上げることで生き残る

「ゾンビ企業」と書きましたが、そんなレッテルがどこかの町工場に貼られている訳でも、あらかじめ決まっている訳でもありません。ゾンビ企業になるかどうか、つまるところは各町工場が自分で決めることです。しかし、新しい挑戦を止め、低下価格競争という楽な場所に安住するならば、それはソンビ化の一歩であると思わざるを得ません。

人の育成にせよ、設備への投資にせよ、私たち町工場は、高い付加価値を追求してこそ生き残り、産業を発展させることができます。

よく大企業と比べて「町工場なのにすごい」などと言われたり、逆に「凄腕の町工場」などとおだてられたりしますが、どちらも違うように思います。私たちは「町工場だからこそ」という強みを見出し、付加価値を打ち出していかなければなりません。大企業の真似をしたり、妙に背伸びをしたりするのではなく、それぞれの本当の価値と向き合い、それを経営や技術の向上という形で表現することが大切です。

私たち町工場は、苦しくても付加価値を上げることが、唯一生き残る道です。

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