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町工場の納期を知る3つのポイント

なぜ納期が3〜4週間先になるのか?

町工場に加工案件を持ち込む際に気になるのは、やはりコストと納期でしょう。私たちも「納期はいつ頃になりますか」という質問を必ず最初に聞かれます。個別に事情は異なりますが、標準的な回答は「3〜4週間先」というものです。

(コストについては「町工場の費用を知る3つのポイント」をご参照。)

1日でも1時間でも早く仕上げて欲しいと思ってしまうのは人情です。従って「単純な作業なので1週間程度で仕上がるはず」と見込んでいたのに、予想外の長さを示されると「なぜ?!」と疑問に思うこともあるのではないでしょうか。

実は、町工場にも町工場の事情があるのです。それを知ると知らないとでは、最終的な納期に大きな違いが生まれる可能性もあります。緊急対応時も含め、製造を計画的・効率的に進めていくには、今の町工場のビジネススタイルを理解し、裏側で働いている力学を知っておくことは、大いにメリットのあることです。

しかし、こうした裏事情は、実はあまり知られていません。本記事では、町工場の納期に関する事情をわかりやすく解説していきたいと思います。

現在の町工場のビジネススタイル

まず押さえておくべきは、町工場のビジネススタイルです。典型的なものとして、以下の二つの型があります。

  •  大口顧客・量産型:大口顧客からの量産品や大ボリューム案件を受託製造
  •  単発・少量生産型: 多種多様な顧客からの単発品、小ロット品を受託製造

大口顧客・量産型は、伝統的な町工場ビジネスのスタイルです。基本的には、お得意様用に機械設備と社内体制を整え、非常に効率的な製造システムを構築することでコスト競争力を獲得するビジネスモデルです。安定的に仕事が入り、右肩上がりで成長していた時代には、大口のお得意様を持つことで事業は十分に回っていました。

しかし、現在のように量産の仕事が海外にシフトし、国内での需要が大きく減少する中では、「お得意様ビジネス」だけでは会社規模を支えきれなくなってきています。大口顧客だけに頼る町工場では、顧客の都合次第で機械が何日も空いてしまったり、1シーズン丸々受注が来なかったりすることが頻繁に起こるようになってきました。

そこで近年では、そういった仕事の隙間を埋めるため、大口顧客以外の多種多様な顧客や案件を取り込む単発・少量生産型のビジネスの比重が高くなってきています。このスタイルにおいても、いつ仕事が入るかわからない不安定さは残りますが、うまく空いた機械の穴を埋められれば、それだけ収益が良くなるのです。

実際、現在の町工場の多くは、大口顧客・量産型を基本としながらも、単発・少量生産型をうまく組合せて事業運営をしているところが多いようです。また、試作専門の町工場のように、単発・少量生産型のみでビジネスを展開するところも現れてきています。

では、こうしたビジネススタイルの変化は、町工場の納期にどのような影響を与えているのでしょうか。以下、町工場の納期を知るうえで大事だと思われる3つのポイントを説明しましょう。

POINT1:町工場の工程管理は「モザイク模様」

町工場では案件をどのように管理・運営しているのでしょうか。機械設備を主とした加工業者では、加工機械ごとのスケジュール表を作成し、工程管理を行っている所が多いようです。簡単なサンプルでイメージを掴んでみましょう。

縦軸が保有する加工機械、横軸が日程の表となっています。まずは、お得意様の加工案件だけを抜き取ったものを表示してみます。色を塗ってある部分に、加工機械で加工する予定が入っていることを表します。同じ色は同じ顧客です。
(注)工程管理の仕方やスケジュールの作り方は個々の会社で異なります

図1:工程管理表サンプル(大口顧客のみ)
図1:工程管理表サンプル(大口顧客のみ)クリックして拡大

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例えば製品Aというのは、旋盤1→フライス1→放電1といったように複数の加工機械を経て製造されます。製品A、製品B、製品Eは、短期の案件が定期的に入ってくるようですが、製品Cのように単発で一定期間を通じて機械を占有する案件もあります。

また、機械の使用状況も多様です。例えば、フライス2は製品Eを製造するのに使用していますが、週に1日ずつしか稼動していません。フライス3や旋盤3に至っては、まったく使われていないようです。全体的に、空白の部分が多く見られます。恐らくこの稼働率では、十分に事業を継続することは難しいでしょう。

そこで、多くの町工場では、この空白部分に単発案件を組み込み、使用されていない機械も積極的に活用することで、全体の稼働率をあげる努力がなされています。その結果、案件と機械の稼働状況は図2のようなイメージとなります。これくらいの案件をこなすことで、小さな町工場は成り立っているのです。

工程管理表サンプル(単発案件含む)クリックして拡大

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現代の町工場は、多種多様な顧客と案件を複雑に組み合わせるビジネスモデルになっており、その工程管理はさながら「モザイク模様」のようです。こうしたスタイルで仕事をしている町工場においては、急なスケジュールの変更や調整は非常に難しいのが実情です。

POINT2:納期の長短はタイミング次第

では、単発や小ロット案件の場合の納期はどのように設定されるのでしょうか。もちろん、大きさや難易度などによって大きく変わりますので一概には言えませんが、一番お問合せの多い手のひらサイズから数百mm程度までの、中級サイズの切削加工品について見てみましょう。

町工場に図面を提示して納期を尋ねれば、概ね「標準納期は、3~4週間程度」という回答になると思います。比較的簡単に作れそうなものでも、これくらいの納期を提示されることが多いのが普通です。

その理由は「モザイク模様」の案件管理にあります。どの町工場も、稼働率をあげるため、常にスケジュールを案件で埋めていきます。そのため、一般的な町工場では、目先の2週間程度は埋まっているのが普通です。

従って、基本的には注文を受けても2週間程度は加工に着手できません。実際に加工そのものに要する期間が1~2週間としても、着手するまでの2週間が加わって、標準納期3~4週間という回答になるわけです。

ただ、スポット的に加工機械が空く場合もあります。こういったときは、超短納期でも対応できたりします。逆にタイミングが悪いと、「あと5分早ければ。。。」なんてこともあるのです。

こうした町工場の内部事情は、外からは全く見えません。できるだけ早めに委託先に話しておき、状況をこまめに把握した上で、いざとなった時には調整してもらうようにしておく必要があるでしょう。

また、そういう取引先がない場合には、弊社のような「ものづくりインテグレーター」に相談してください。パートナー同士で、情報交換をしていますので、適切な先を探して対応することができます。

POINT3: 納期を早く確定するにはコツがある

納期はタイミング次第と書きましたが、そのタイミングをうまく掴むためには、無駄なやりとりを極力少なくし、迅速に納期・発注を確定させることが大事になります。これは、発注者側にも町工場側にもメリットのあることなので、そのコツを以下に伝授しましょう。

いずれも、町工場側が正確な見積もりを出す上で必要な情報です。これらの情報が不足していたり、不正確であったりすると見積もりだけでなく、納期そのものが大きく遅延する恐れがありますので、一つ一つ丁寧に確認していくことが大切です。

(1)製品の仕様、品質要求をできるだけ具体的に提示する。
大まかなアイデア段階からでもご相談に乗ることは多々ありますが、納期を急がれるのであれば、図面、CADデータ、 特記事項等を具体的に提示していただくことが、迅速かつ正確な見積もりには不可欠です。

(2)業務の範囲をできるだけ明確に提示する。
町工場では、基本的には顧客の指示に基づいて正確に業務を遂行することが求められています。従って、この業務の範囲が正確でないと正しく見積もることができません。「材料調達は誰がするのか」、「支給される材料のサイズ」、「表面処理を含めるか」といった工程全般に関する具体的な業務範囲を明らかにすることが重要です。

(3) 日程に関する情報を明確に提示する。
日程に関する情報も必要です。納品期日も大事ですが、「モザイク模様」の工程表を効率的に管理していく必要から、見積期日と発注予定日も非常に大事な情報です。

(4)発注量やリピート性についての情報を提示
迅速な見積もりを提示するためには、発注量やリピート性を正確に提示してもらうことも大事な要件となります。数量の多少は単価計算に影響しますし、リピート注文の有無は全体の粗利の高低を左右します。

(5)予算の範囲をできるだけ明確にする
予算単価や類似品実績単価など、見積金額の参考となる単価があればできるだけ教えて下さい。予算イメージのないままに見積もり出すと、作業内容と予算水準の間に乖離が生じて二度手間となる恐れがあり、作業が大きく遅れる原因にもなります。

以上、納期にまつわる町工場側の事情を解説しました。町工場側としても、できるだけ顧客のニーズや意向に沿うように工夫や努力をしていますが、こうした事情を知っていただくことで、少しでも双方にとってメリットのある良い関係を築いていければと思っています。

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