TOKYO KEYBOARDプロジェクト #1

アルビンとの出会い

アルビンと出会ったのは、TOKYO町工場HUBを始めてほどない3年前。ホームページを見たアルビンから問い合わせを受けたのがきっかけです。新宿のカフェで会い、たちまち意気投合。それ以来、様々な活動を一緒にしています。

アルビンはアメリカ人。デザイナーとしてのセンスと能力を生かし、サンフランシスコでフード関連のベンチャーの立ち上げに成功したのち、数年前から日本に移住しています。日本では自由が丘にサードウェーブ・コーヒーを核にしたお洒落なカフェ(Alpha Beta Coffee Club)を立ち上げて、これも成功。今も、このカフェのライセンサーとして事業に関わっています。

しかし、出会った時のアルビンは、軌道に乗ったカフェ事業からは少し身を引いて、自分でデザインしたものをカタチにしたいという夢に情熱を傾けていました。それが TOKYO KEYBOARD です。すでに最初の1機目のデザインはできあがっていて、海外での部品の調達も進み、販売まであと一歩というところでした。そして、その発展として、将来、全て日本製のキーボードを制作したいとう希望を持っていました。日本のものづくりの魅力を詰め込んだものを。

初代のTOKYO KEYBOARD

町工場訪問

そこでアルビンには「いろいろな工場を一緒に訪問しよう」という提案をしました。ちょうどTOKYO町工場HUBも、町工場のネットワークを構築するために、あちこちに訪問しているところだったので、タイミングも良かったのです。そして一緒に色々な工場をめぐり、人と会い、技術を見ることを繰り返してました。

ある時、漆を塗ったキーボードを制作したいとアルビンが言い出し、足立区にある漆の製造メーカーを訪問したり、墨田区の著名な漆塗りの伝統工芸士を訪ねたりしました。これはとても素敵な経験でした。その他にも、金属加工、樹脂加工、特殊印刷などの様々な工場を見学。日本に在住する外国人デザイナーを集めた町工場のイベントもやったことがあります。

手がけていた最初のキーボードも斬新なデザインで、販売開始と同時に大きな評判を呼んで、想定していた台数はすぐに売り切れて、増産が続くような状態でした。しばらく、この対応に忙殺されていたようですが、いよいよ夢のTOKYO KEYBOARDに舵を切り、今に至っています。

キーボードを新しくつくるということに、意外感を持つ人もいるかもしれません。確かに一般にあまり目立つようなものではないし、世間に安い製品が氾濫しています。今更、なぜキーボードに情熱を傾けるのか、訝しがる人もいても不思議ではありません。

しかし、実はキーボードの愛好家の世界は熱気にあふれているのです。たとえ高価であっても、キーボードのあらゆる部品にこだわり、クリエイターたちが次から次へと斬新なデザイン生み出しています。特に特殊なプログラミングを行う人のためのプロ仕様のものは人気があります。ニッチな市場には違いないですが、小規模事業者が挑戦するだけの規模と奥深さを持った市場なのです。

キーボード愛好家のイベントでのシーン。

更に言えば、アルビンは、ただお洒落なキーボードを売りたいというだけでないのです。こうした家電をファッションと融合させ、新しい価値の提案をしたいと考えています。キーボードを家電量販店で売るだけでなく、アパレルやアクセサリーを販売するブティックで、ファッションの一部として自然に売られているような世界を作ろうと。

その考え方の背景にあるのが、テクノロジー先行の風潮に対する反発であり、持続可能な社会という観点から、人間が人間らしく生きる社会やライフスタイルに対する希求です。

TOKYO KEYBOARDプロジェクトは、東京の町工場の作り手のストーリーを詰め込んだ斬新的なキーボードをつくり、世界中に販売することを目指しています。町工場のストーリーを紡ぐことを目指していますが、これはまたアルビンの東京のものづくりを発見する旅であり、ストーリーになります。