TOKYO KEYBOARDプロジェクト #5
ALIX 40
TOKYO KEY BOARDの新作キーボードの名前は、「ALIX 40」。色はブラックとオレンジの2色で、それぞれに「Ghost」と「Sunset」という愛称が付けられました。
このキーボードは、一般のキーボードの40%しかキーの数がありません。特殊なプログラミングを行うためにカスタマイズされたもので、まさにニッチなユーザー向けの商品ですが、インスタグラム等での情報発信で関心を集め、事前の評判は非常に高まっていました。
関心を集めたストーリー
関心を集めていたのは、斬新なデザインだけでなく、東京の様々な町工場の技術を生かして作られたというストーリーでした。ALIX40がアイデアから実際に試作品として形をなしていくプロセスをオープンにし、ビジュアルとしてインスグラムで伝えたのです。そのことで、ものづくりに関わる職人たちや開発を進めたアルビンのストーリーを世界の人々が受け止め、共感してくれました。ちょうどタイミング良く放映されたNHKワールドでのドキュメンタリーも、開発の臨場感を伝えることに一役買ったみたいです
価格560ドル、即日完売!
販売は限定100台(オレンジとブラックの2色をそれぞれ50個ずつ)。価格は560ドル(約6万円)に設定し、予約販売の形をとりました。先に支払いを受けて、その資金で量産を行う方法です。
価格については、製品のコストではなく、製品の生み出す価値に注目して560ドルとしました。通常、このような製品は高くても200ドルをこえることは滅多にありません。実際、これは高性能のパソコンを購入できる価格です。しかし、十分にその価値がある(と考える購入者が十分にいる)という直感を信じ、自信をもって設定したものです。
TOKYO KEY BOARDのオンライン・ショップで、2020年9月11日(金)の午前8時に予約販売を開始。
驚いたことに、30分後には50台をこえる注文が入り、その日のうちに全て完売できました。価値があるといくら自信を持っていたとしても、6万円のキーボードがこんなに早く売り切れるとは予想外でした。良いものには相応の対価を払う人がいるのだと、改めて認識した次第です。
関係者がすべて幸せになるビジネス
これから量産に入り、そこにもいくつものハードルが残されているので、まだ全てが成功であると断言できる段階にはありませんが、本事例は関わる関係者が全て幸せになる理想的なビジネスのひとつの典型です。購入者はワクワクするような美しい製品を手にし、製造に関わった者達は適正な対価を手にし、デザイナーは自分のセンスの確かさを証明し、次の案件に向けての投資が可能になる。価格競争の陥る負の連鎖とは真逆にある価値創造の正の協創のモデルがここにあります。
この具体的な分析は別の機会に譲りたいと思いますが、様々な面で参考になる事例になったと考えています。