ザンビア大使が町工場を訪問!
東京のモノづくりと伝統文化を視察
去る2019年5月20日(月)、駐日ザンビア大使館のムティティ特命全権大使と公使参事官をはじめとした大使館員の方々3名を案内し、足立区と葛飾区の3つの工場を巡り、葛飾区伝統産業館を訪問、職人の方々とも交流し、夜はお花茶屋の森谷邸でホームパーティを開いて、葛飾区の皆さんと大使達を歓待致しました。
関係者の皆様のご尽力のおかげで、ムティティ大使と視察団のみなさんは、大いに喜んでおられました。遠い異国の地として感じていたアフリカが、少し身近に感じることができたのは、素晴らしいことだったと思います。これを機会に、足立区と葛飾区の町工場や伝統産業がザンビアの国々の人たちにとって近い存在となり、将来のビジネスや観光の交流に繋がっていければと願っています。
御礼
実に8時間を超えるプログラムで、たくさんの方々にお世話になりました。訪問を受け入れてくださった株式会社安心堂、株式会社トミテック、槙野産業株式会社、大使を迎えて頂いた葛飾区伝統職人会のみなさまに心から御礼申し上げます。
ホームパーティを主催してくださった株式会社Beingの伊藤先生、米山先生、うてな先生、森谷邸の使用を温かく受け入れて下さった福島美邦子さん、ホスト側の主賓としてご参加いただいた三絃司きくおかの河野公昭師匠、素晴らしい三味線を弾いてくださった鈴木麻衣さん、通訳してくれた古川夏輝くんには、歓迎会を大いに盛り上げてくださり、深く感謝しております。
また、今回は足立区役所の産業振興課と報道広報課の方々に大使の訪問を広報面で支えていただき、テレビなどの取材を受けることにもなりました。工場訪問時にはアテンドもいただきました。ご厚意とご尽力に厚く御礼申し上げます。
最後に、今回のプログラムの準備も含めて全面的に支えてくださった料理研究家の大瀬由生子先生とジャパンフィルター株式会社の木村真有子社長には「ありがとう」を何度言っても言い切れないほど、感謝しています。
みなさん、本当にありがとうございました。
訪問の経緯とプログラム内容
以下、記録のため、プログラムの経緯と内容を記します。
経緯
ムティティ駐日ザンビア大使の訪問は、一般社団法人アフリカ協会の開催した「駐日ザンビア大使を囲む会」にTOKYO町工場HUBが招待を受け、その場で東京の町工場の魅力を語ったところ、大使が強く興味を持たれことがきっけけです。
ムティティ大使によれば、長年ザンビアと日本間のビジネスを促進する努力をしているけれども、日本の大企業や中堅企業はアフリカというだけで尻込みするところも多く、なかなかビジネスにつながらないということでした。
そこで当方から技術を持っている東京の町工場に注目することを提案。ザンビアに直接投資したり、すぐに製品を輸出できるという体制にはないけれど、小さいからこそ決断が早く、柔軟性もあり、次世代の国際ビジネスの早い変化や多様性に順応できる可能性をもっていると説明しました。
翌週には大使館に呼ばれて詳しく話したところ、大使はぜひ自分の目でみてみたいとのこと。足立区と葛飾区の町工場視察のアレンジすることとなりました。
大使館側の参加者(4名)
- ンディョイ M. ムティティ 特命全権大使
- ジム シニェンザ 公使参事官
- ノートン ムンバ 参事官
- ピュウカ ンクニカ 一等書記官
1. 株式会社安心堂への訪問
最初の訪問は、足立区の株式会社安心堂。パッド印刷の卓越した技術を持つ同社は、「なんでもくん」という画期的なパッド印刷装置を開発しており、常に新しいことに挑戦する同社の魅力や理念を紹介したく、最初の1社として訪問させていただきました。
最初は少し戸惑い気味であった視察団一行も、丸山寛治会長と丸山有子専務の話とパッド印刷のデモンストレーションを見るに従い興奮度を増し、米粒に印刷した広告を見て「アンビリバボー!」と感嘆、「なんでもくん」を活用した事例の一つとして紹介されたスラックレールに自分たちで印刷する体験をするあたりでは、すっかり安心堂のファンになって大盛り上がりでした。
安心堂さんのような小規模の会社に、大きな可能性があることを実感いただいたようです。同社から次の訪問先へ移動する間も、ザンビアでの「なんでもくん」の展開の可能性についてずっと話が続いていたほど。
なお、TOKYO MXの記者が取材にこられ、大使訪問の模様はその日のニュース番組で報道されています。番組のサイトにも掲載され、ニュースの動画もyoutubeで公開されています。
TOKYO MX NEWSのWeb サイト
2. 株式会社トミテックへの訪問
次は、極めて高い精度と正確性で、大手の自動車メーカーや家電メーカーなどに部品を供給する町工場の事例として株式会社トミテックに訪問させていただきました。同社の金型製造から精密なプレス加工するところまでの一貫加工の様子を見ていただき、規模の大小に関わらず、ザンビアが今後産業化を推進するにあたって戦略的なパートナーとなりうる工場があることを知っていただくのが狙いでした。
卓越した技術もさることながら、大使一同を大いに感激させたのは、玄関先から工場の隅々まで心を配った同社のホスピタリティでした。玄関にはザンビア語で「ようこそ!」が書かれた掲示があり、それを見た一同は大喜び。さらに事務所へ上がる階段の壁には、至るところにザンビアの国旗や風景の写真が貼られており、歓迎ムード一色でした。事務所に到着するまでには、一同の心はすっかり奪われたという様子で、同社の尾頭恵美子社長のおもてなしには頭が下がる思いです。
トミテックさんには、J:COMさんが取材にきてくださり、翌日のニュース番組で報道されました。残念ながら番組の内容はyoutube等にはアップされていないのですが、多くの方々に見てもらったようです。
ザンビア共和国
ザンビア共和国(ザンビアきょうわこく)、通称ザンビアは、アフリカ南部に位置する共和制国家。イギリス連邦加盟国のひとつである。かつてはイギリス領北ローデシアであった地域。内陸国であり、コンゴ民主共和国、タンザニア、マラウイ、モザンビーク、ジンバブエ、ナミビア、アンゴラ、ボツワナの8つの国に接している[3]。首都はルサカで、2018年に発表された世界平和度指数ランキングでは163か国中48位となり、アフリカでもっとも平和な国の一つとして評価されている。
ザンビアと南隣のジンバブエとの国境に流れるザンベジ川には世界三大瀑布の一つと称されるヴィクトリアの滝があり、アフリカを代表する動物、ゾウ、カバ、キリン、シマウマ、ヌーも多く住み、大自然が大変よく残されている。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
3. 槇野産業株式会社への訪問
3番目に訪問したのは、葛飾区の粉砕機の専門メーカーである槇野産業株式会社。同社は1926年に創業した老舗で、戦後、日本の食糧難の時代には、同社の粉砕機が食糧生産に大きな役割を果たしたという歴史もある会社です。また、国際的なビジネス経験も豊富で、アフリカのケニアとスーダンに国際協力事業として粉砕機を納入した実績もあるとのこと。経済発展が著しいザンビアにおいては、食品加工業などで原材料を粉末化するニーズが高まることも予想され、同社の槇野常務に訪問の可否をご相談させて頂いたところ、快く受け入れてくださいました。
同社ではプレゼンテーションも英語で行われ、大使たちからも粉砕機の種類や役割、容量などについて様々な質問が出され、関心の高さが伺われました。また、工場の内部を視察させていただき、粉砕機の各種用パーツがひとつひとつ丁寧に制作されている様子を見て、「日本の技術者の技術力はすごい」とひときわ感心していました。
大使館側の話によれば、ザンビアでは、シマという粉末のメイズ(トウモロコシ)を煮て練って固形状にしたものを主食としているほか、近年では大豆の生産が大きく伸びているとのこと。現状は旧来の粉末機を使用しているが、今後、ライフスタイルの変化とともに、より品質の高い粉が要求されることが見込まれ、同社のような技術が必要とされるのではないかと話していました。
4. 葛飾区伝統職人会を訪問
最後に、葛飾区伝統産業館を訪問し、伝統職人会のみなさまと会っていただきました。葛飾区の伝統産業は東京の豊かな下町文化を今に継承し、一流の職人たちが残っています。立石にある伝統産業館は小さな美術館のようで、そのような伝統職人たちの活動を伝える作品がきれいに展示され、一般に販売されています。
プログラムを提案した際に、日本の伝統文化を支える東京の伝統職人の方々と会っていただきたいと話したところ、「ぜひ会いたい!」と楽しみにされていた訪問です。
入館すると一番手前にある展示ブースには、印伝矢部さんのきれいな印伝の作品が陳列されていて、その美しさに大使は大喜び。すぐに印伝のメガネケースを購入。大使は、館内のひとつひとつの作品を興味深く見ていましたが、特に女性である大使は、彫金の手編みジュエリーに大層興味を持たれてずっと眺めていました。対照的に、大使館の男性陣は、打ち刃物の数々に強い関心を惹かれたようです。
今回は、大使の訪問に合わせ、伝統職人会の方々が出迎えてくださり、江戸べっ甲のお話や、友禅の手描きの染物の話などを丁寧に説明してくださりました。この温かいもてなしに、大使も深い感謝の念を述べられ、最後には東京手描友禅の兵頭修師匠よりお土産まで贈られて、視察団のみなさんは大変なご満悦でした。
5. 森谷邸でのホームパーティー
工場等の訪問を終え、葛飾区のお花茶屋にある森谷邸で、葛飾区の伝統産業の振興を目的に設立された株式会社Being主催で、歓迎のホームパーティーを開きました。会場の森谷邸は宮大工の手になる伝統的な日本家屋で、現在は福島美邦子さんのグループが運営し、宿泊施設・レンタルスペースとして一般に利用できるようにされているところです。大使たちをアットホームな雰囲気でお迎えしたく、森谷邸にお願い致しました。
ホームパーティには、三味線づくりの名匠である三絃司きくおかの河野公昭師匠をホスト側の主賓としてお招きし、元都議会議員の伊藤先生、葛飾区議会議員の米山先生、うてな先生にもご参加を頂きました。
ホームパーティのコーディネートは、著名な料理研究家である大瀬由生子先生にお願いし、和食文化を体験的に楽しめる特別な企画をご用意いただきました。森谷邸の素敵な佇まいに、大瀬先生の素晴らしいテーブルコーディネートと食事がマッチし、とても贅沢な空間となりました。
葛飾区の伝統産業のひとつである打ち刃物でつくられた包丁(八重樫打刃物製作所より借用)で一般の包丁では切りにくいトマトがスパスパ切れる体験をしていただいたり、同じく葛飾区で作られた手打ちのおろし金で大根を擦ってもらい、その味の違いをおろしポン酢でのステーキを召し上がっていただき味わってもらうなど、楽しいアトラクションも用意しました。大瀬先生の手ほどきで、テーブルでつくる味噌汁にも挑戦し、わいわいと大いに盛り上がりました。
食後には、芸大出身で琴を中心とした和楽器のプロの奏者である鈴木麻衣さんに三味線の演奏をしていただきました。和楽器の生演奏を、これほど近いところで聴く経験はめったになく、心動かす音色にゲストのみなさんもうっとりとしているようでした。大使は、美しい着物姿にも感動したようで、鈴木さんにポーズをとってもらい、熱心に撮影しておられました。
締めには柴又の草団子を召し上がってもらい、ザンビアの方のお口に合うか心配していましたが、とてもおいしいと喜んでくださいました。
最後に河野師匠より師匠が開発した小型の三味線である「小じゃみチントン」の富士山を描いたバージョンのプレゼントがあり、弾き方まで習っていただきました。お別れの時には、大使からは気持ちのこもった感謝のお言葉をいただき、皆でお見送りを致しました。
最後に
実に盛りだくさんの1日でしたが、あっという間に時間が過ぎていく感じでもありました。どの訪問先でもとても温かく迎えてくださり、本当にありがたく、関係した皆様お一人ずつ心から感謝申し上げます。
また、ホームパーティでは大瀬先生とともに、ジャパンフィルター株式会社の木村真有子社長に裏方を仕切っていただきました。極めて負荷が重い仕事となってしまい、本当に申し訳なく思っていますが、最後まできちんと対応してくださり、お二方には感謝しかありません。
政府や行政ではなく、純粋に民間で行なった小さな取り組みではありましたが、これが日本とザンビア、あるいは他のアフリカ諸国の人々との交流のきっかけになってつながっていければと願っています。