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スタートアップのためのファイナンス

A-MAP:第2回特別公開セミナー開催報告

足立区のスタートアップ支援プログラム A-MAP(TOKYO町工場HUB運営)第2回特別公開セミナーを開催しました。テーマは「スタートアップのためのファイナンス」。スタートアップにおいては、資金をいかに調達するかは大きな課題です。高いリスクを感じているアントレプレナーも多いと思われます。今回は、ファイナンスの戦略を考えるための様々なオプションを伝え、ファイナンスは運用側と調達側のコラボレーションの側面もあること、創造性を発揮する機会でもあることを解説しました。今回も多様な参加者が集まり、ワークショップでは立場の異なる者の視点や考え方を知り、学びを深めました。

セミナー内容

スタートアップにとってファイナンスは、大きな課題でもあり、また機会でもあります。人によっては大きなリスクに感じる人もいますし、逆に事業が飛躍する絶好のチャンスと捉える人もいるでしょう。リスクと感じている人たちの中には、ファイナンスを資金調達側の立場だけで考えていることが多いように思います。そのため、限定的な方法しか思い描けない恐れがあります。今回のセミナーでは、ファイナンスという活動を少し俯瞰してみることで、戦略に合わせた形で様々な方法がありうることを伝えました。

ファイナンスを考える上では、調達先が背景や資金源を見極めることも大事です。例えば、銀行とベンチャーキャピタルは、資金を提供する方法もその事業上の文脈も異なります。その理解を深めることで、ファイナンスとは目的に向けて資金提供側と資金調達側の協働であることにも気づくはずです。

ファイナンスを戦略的に取り組む

講師の古川は、ファイナンスにかかわる様々な立場で仕事をしてきていました。今までに、銀行員、ベンチャーキャピタルの取締役、財団理事、起業家、国・行政の審議委員を歴任し、それぞれの立場で資金の調達と運用の両方に関わってきました。その経験からファイナスの取り組みは、非常に多面的であり、創造的に取り組むべきものだと知りました。

多くの経験から言えることは、ファイナンスは戦略的に取り組む必要があるということです。つまり目的と目標をきちんと定め、自社の現状、様々な制約と取り得る可能性をきちんと分析し、具体的な戦術を考えることです。難しく複雑な計画ではなく、シンプルに考えることが肝要です。

目的に沿う形で、ファイナンスを組み立てていくことでやるべきことが見えてきます。

通常、スタートアップは多くの制約を抱えています。返済する目処が立たないのに、融資を受けるのはリスクが高いでしょう。事業のコントロールを渡したくないのであれば、出資は受けない方がよいかもしれません。

いずれにせよ、全ての希望を満たすことは難しく、様々なトレードオフが必要ですが、ファイナンスにはたくさんのオプションがあり、その中で最適な組み合わせを見出すことで道が開けてきます。ファイナンスは、創造性を発揮する機会なのです。

資金提供側の立場に立ってみる

今回もミニワークショップを行いました。参加者をグループに分け、それぞれをベンチャーファンド、財団、行政、事業会社の投資チームに仕立ててました。全員で同じピッチ(スタートアップの短いプレゼン)を聞いて、投資するかどうかを各チームで検討するというものです。

同じピッチを聞いても、立場が違うと向き合い方が変わります。またチーム内でも意見が分かれるでしょう。何に注目し、何を基準に判断するのか。スタートアップの資金調達の反対側の立場を知ることで、ファイナンスに対する見方が変わってきます。

このような体験をするとわかるのですが、資金提供側も人間なのです。良いアイデアを持ち、頑張っている人には応援したいという「感情」が生まれてきます。ファイナンスというと何か冷たいイメージを持ちやすいのですが、人の感情がものごとを動かす点も実感できたと思います。

講師

TOKYO町工場HUB
代表 古川 拓

京都大学法学部卒。バンカーとして日米で通算15年間勤めたのち、2004年に独立。創造力のある人材や優れた技術で社会課題の解決を促すソーシャルデザイン/プロデュースの道を進む。複数のスタートアップを立ち上げた企業家であるとともに、ベンチャーファンドの取締役、財団理事等を歴任し、国内外で活動してきた。2017年よりTOKYO町工場HUBの事業を始め、現在に至る。

2009年より2020年まで11年間に渡り、東京大学院新領域創成学科の非常勤講師として同大学院の環境マネジメントプログラム「持続可能な社会のためのビジネスファイナンス(全10回)」を教えた

スタートアップのための
足立ものづくり
アクセラレータープログラム2022

「足立ものづくりアクセラレータープログラム2022(A-MAP)」は、東京都足立区が初めて実施するスタートアップのためのアクセラレータープログラムです。TOKYO町工場HUBが、企画・運営しています。ハードウエアをメインにした課題解決型の新しい製品開発や事業開発に取り組むスタートアップ事業者に向けた支援です。

第一期となる2022年度は、様々な社会課題の解決に取り組むスタートアップ3社が選ばれました。これから半年間にわたるメンタリングと7回の公開セミナーが開始されます。