| |

東東京サウナ実験室プロジェクト #1

電気サウナストーブ開発に挑戦

テントサウナをご存知でしょうか。キャンプ場などでテント内にサウナストーブを設置し、少人数でサウナを楽しむもので、サウナの本場であるロシアで盛んです。電熱で石を温めるものから、薪ストーブを利用して蒸気を噴出するものまで、種類やサイズも多様なものがあります。アウトドアブームに乗り、日本でも人気が出ていますが、日本で使われている製品のほとんどはロシア製です。

このサウナストーブを日本で作りたいとご相談を受けました。株式会社アサブロという台東区の企業で、代表取締役の池田洋介さんからお問い合わせをいただきました。同社はWeb・アプリ開発を中心に事業を展開しているエンジニア集団。「アサブロ」とはユニークな社名ですが、風呂・サウナ好きが集まっているので、この名称にされたそうです。

オフィスがある屋上にサウナを楽しむためのスペースを用意し、会社の皆さんで楽しんでいるとのこと。サウナ好きが高じて、いよいよ自分たちで純日本製のサウナストーブを作りたいとなり、お声がけ頂いたとのこと。特に「東東京」で制作することにこだわりを持っています。

ソフトウエア開発のプロフェッショナルですが、モノづくりは始めての挑戦。アイデア段階から一緒に考えてくれるところを探してTOKYO町工場HUBに辿り着いたそうです。

株式会社アサブロの池田社長

既存製品の調査

まずはZOOMで打ち合わせを行いました。当方からは、開発予算や開発期間について、おおまかな説明をしたところ、進めたいというご意向でした。そこで、株式会社小川製作所の小川真由さんと共に、アサブロ社を訪問し、使用されている電熱で石を温めるタイプのサウナストーブを調査し、イメージを共有する時間を取りました。

ロシア製のサウナストーブは、実にシンプルな構造です。内側が電熱炉になっており、そこに石を入れます。炉の熱が石に伝わったところで、水を掛けて蒸気を発生させます。熱された石と蒸気でテント内の温度は上がり、冬でも100度を超えるそうです。電気なので扱いやすいのですが、家庭の電圧では足りず、電力会社にアップグレードする工事を依頼して対応したとのこと。

池田さんのご希望は、気軽に持ち運びができる電気サウナストーブでした。自宅やアウトドアでも工事なしで使えるもの。まずはその可否について検討することがステップ1となります

電気では困難という結論

実際にサウナ体験をしてみればよく分かるのでしょうが、コロナ感染が広がっていることもあり、ストーブの構造を調べることに。温度を調整するツマミなどがありましたが、基本的にシンプルなつくりです。問題は電力ですが、ポータブルなものにするには、電池が必要です。

同社訪問後に、上記の用途に見合う電池が一般に入手できるか調査。テント内を温めるのに、30分以上がかかり、その後も高い温度を維持するためには。相当の電力が必要となります。調べた結果、電池では難しいという結論になりました。

失敗は新アイデアを生み出す

複数の小型ストーブを組み合わせるなど、他の方法も検討しましたが、良いアイデアは出ずに「電気サウナストーブ開発は、現時点では困難」という結論に至りました。そこで本プロジェクトは一旦終了ということになりそうなところでした。

そこに、池田さんより「燃料としてバイオエタノールを利用したサウナストーブが作れないか」というアイデアが出されました。

バイオエタノールを利用したヒーターというものは既に存在し、非常に簡易な方法でストーブを製作した実験ビデオもYouTubeにありました。この方法は、検討の余地があるということで、ここからバイオエタノールを燃料にしたストーブの開発が始まったのです。

ひとつの失敗は、新しいアイデアを生み出すのためのきっかけになることが多々あります。アサブロさんの事例は、まさにその典型で、その後も続くパターンです。スタートアップにレジリエンス(「回復力」「弾性(しなやかさ)」)なことを池田さんは教えてくれます。

つづく

株式会社小川製作所の小川真由さん

東東京サウナ実験室

バイオエタノールを燃料にしたサウナストーブ開発

これまでテントサウナを楽しむには薪ストーブが主な選択肢で煙が排出されるため設置場所が限られていました。今回開発中のサウナストーブは薪ストーブと違い煙を排出しないため、都会のど真ん中でも近隣の影響を気にせずに、設営スペースさえあればテントサウナを楽しむことができるようになる予定です。

周辺環境を気にすることなく好きな時に誰でも気軽にサウナを楽しめる究極のポータブルサウナストーブを目指して開発をしています。

株式会社アサブロ