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東東京サウナ実験室プロジェクト #2

バイオエタノールを燃料に再スタート

アイデアを起点に新製品や事業を開始する人もいると思います。その場合、そのアイデアが技術的あるいは資金的に難しいとなった場合、行き詰まってしまいます。しかし、ビジョンを元に始める人は、最初のアイデアや計画にはこだわりません。最後のアイデアが求めるビジョンの創出につながれば良いと思っています。松下幸之助のように「失敗とは成功するまでやり続けないこと」と言い切る人もいますが、そこまでストイックにならずとも、多少の失敗は折り込んでおいた方が良いと思います。

さて、最初のアイデアであった電気サウナストーブは、あっけなく断念することになりました。しかし、そこで諦めることはしません。池田社長が「バイオエタノール」を燃料にするサウナストーブのアイデアを思いつきました。電気ストーブよりは、見込みがありそうに見えました。そこで、まずは実験的な開発を進めることになりました。

開発の進め方

類似品があれば、まずはそれを良く分析し、その改良改善を考えます。しかし、まだ誰も作ったことがないモノに挑戦する場合、どこから開発を進めるかは、簡単ではない上に、その後の開発に影響しますので重要な決断になります。

一般に、製品開発は要求する機能を明確化するところから始めます。何がしたいのか、はっきりさせることです。例えば、サウナストーブの場合、テント内でサウナとして機能するための、様々な要件があります。そうした要件をきちんと挙げて定義していく過程が要件定義です。大きな機能から、その構成要素となる機能に至るまで詰めていきます。

次に、そのような機能を実現する個々の機構を考えながら、それぞれの機構が構造的に統合できるように設計や開発を進めることになります。こうして全体が整合性を持って一貫し、具体的な実行へと進んでいきます。

しかし、実際にはこのように単純に、順序よく一方通行の論理では進みません。ビジネスには制約が付き物だからです。技術的、資金的、時間的など、いろいろな制約条件のもとに検討を進めないと、非現実的な計画になってしまいます。機能側を考えながら、機構側からも遡って考え、行ったり来たりする双方向の思考が求められます。

何から手をつけるか

上記のような展開を念頭におきつつ、最初の一歩を考えることになります。では何から手をつけるか。通常、最も基本的な機能と機構について、その実現性を検証するところから開始します。今回の例でいえば、バイオエタノールを燃料にして、本当にテントは温まるのかという点です。テント内をサウナに適した温度に上げ、石を十分に熱することができるのか。他の機能がどれほど満たされても、テント内の温度が上がらなければ、最も基本的な要求機能を満たさないからです。

そこで最初のプロトタイプは、小さなボックス型のストーブでした。検証したい仮説、つまり「バイオエタノールでも十分にテントを温めることができる」ことを実験できる最低限の機能を持った装置です。

2021年3月23日、最初のプロトタイプができあがり、小川製作所の敷地内で第1回目の十勝実験をしました。実験の目的は二つ。テント内の温度は十分に上がるか。また石は水をかけて蒸気を発するほどに熱くなるか。何でもそうですが、最初はドキドキします。火がつくのか、燃え続けるのか、筐体は保つのか。

さずがにそのような心配は杞憂にすぎませんでしたが、きちんとストーブが機能した時には、嬉しいものです。

実際にテントも用意し、様々な角度から検証しました。想定した通りの結果、想定外の結果の両方が大事です。その結果を次のプロトタイプ開発に活かすことになります。

つづく

東東京サウナ実験室

バイオエタノールを燃料にしたサウナストーブ開発

これまでテントサウナを楽しむには薪ストーブが主な選択肢で煙が排出されるため設置場所が限られていました。今回開発中のサウナストーブは薪ストーブと違い煙を排出しないため、都会のど真ん中でも近隣の影響を気にせずに、設営スペースさえあればテントサウナを楽しむことができるようになる予定です。

周辺環境を気にすることなく好きな時に誰でも気軽にサウナを楽しめる究極のポータブルサウナストーブを目指して開発をしています。

株式会社アサブロ