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東東京サウナ実験室プロジェクト #3

MVP(実用最小限の製品)をつくる

MVP(minimum viable product)とは、仮説検証するための実用最小限の製品です。実用最小限なので、本当の製品化時に必要な機能がないこともあります。

MVPをつくる理由は、以下の3点です。

  • 第一に見込客の反応を見るため。
  • 第二に、自分たちの仮説に対する理解を深めるため。
  • 第三に見えなかったリスクを顕在化させるため。

仮説構築時に頭でイメージしたことや、ニーズ調査の段階での見込客から得たさまざまな情報はもちろん大事ですが、ハードウエアに関しては実物で実際に検証しないと、大きさや重さ、触感や操作性などの情報は、図面上の確認ではわからないことが多いのです。

さらに大事なのは、顧客の反応です。私たちは、聞きたいことだけ聞き、見たいものだけを見る傾向があります。そのため、切実な課題であると想定していたこと、強いニーズがあると信じていたことが、実際には優先度が低かったり、それほど必要とされていなかったことが判明することも少なくありません。リスクをコントロールする上では、このような「見込み違い」が起きることを織り込んだ上で、開発を進める必要があります。MVPはその有効な手法なのです。

試作1号機の製作

東東京サウナ実験室でもMVPとして試作1号機を製作。前回プロトタイプで製作した簡易ストーブをそのまま生かしながら、サウナの石を積み上げるためのラックを製作してサウナストーブとしての最低限の実用性を確保。最初の実験で得られた学びを生かした構造を設計。見た目のデザインは単純化し、細かな機能については可能な限り省略し、時間とコストを抑えた製作にしました。

例えば、消化の機能はストーブの上に鉄板を乗せるだけにしています。また、軽量化の工夫よりは頑丈さと工程の少なさを優先。結果的に少し重くはなったものの、十分ポータブルなものになっています

実験とパイロットテスト

プロトタイプが出来上がったところで、2021年4月28日に、前回と同様小川製作所の敷地内で実験を行いました。今回もテント内に設置し、温度やその他の諸条件をテスト。外気温が 22℃ の環境下でテントサウナ内がロウリュをしない状態で 85 ~ 90℃ まで上昇することを確認しました。また、技術的に改善すべき点も明らかになりました。

アサブロ社内でも継続的に試験を行い、十分に機能することを確認の上、試作品として公開しました。2022年5月20日にアサブロさんからプレスリリースが出され、早くも大手企業から引き合いが来るようになりました。

プレスリリース:https://www.atpress.ne.jp/news/258828

顧客反応の良さを確認し、2021年8月には1号機の課題を改良する2号機(通算3回目の試作)の設計が進みました。この時点ではテスト用から少し進化させ、ある程度の量産も見据えた作り込みになってきています。10月には2号機も完成、テストが行われています。

また2022年10月末にはイベントでパイロットテストも行いました。コロナ感染が広がり、一般の人たちを対象にした大規模な活動ができない中、こうした機会は貴重なものでした。

外部ステークホルダーとの連携開始

ここまでの開発は、自前のテストから見えてきた技術上の課題を自分たちで分析し、仮説を立ててながら改良を行う方法で進んできましたが、いよいよ燃焼工学や熱流体力学等の専門家の力も必要になってきました。また、将来の販売や一般利用を見据えて、製品としての安全性さらにはユーザの利用時の安心安全を守るため、関連する法規制を理解し、関係省庁・行政機関と連携していくことも大事となります。

このあたりの外部のステークホルダーとの協働・連携は次回以降に。

つづく

東東京サウナ実験室

バイオエタノールを燃料にしたサウナストーブ開発

これまでテントサウナを楽しむには薪ストーブが主な選択肢で煙が排出されるため設置場所が限られていました。今回開発中のサウナストーブは薪ストーブと違い煙を排出しないため、都会のど真ん中でも近隣の影響を気にせずに、設営スペースさえあればテントサウナを楽しむことができるようになる予定です。

周辺環境を気にすることなく好きな時に誰でも気軽にサウナを楽しめる究極のポータブルサウナストーブを目指して開発をしています。

株式会社アサブロ