町工場の品質管理は小さく持続的に

町工場の品質管理は小さく持続的に

 

町工場でも品質管理は死活問題

製造業で生きていく上で、品質管理は事業の心臓部であると言っても過言ではないでしょう。自動車メーカーのような大企業でも、わたくしたちのような町工場でも、全く変わりません。「あそこに頼んだら不良品だらけだ」というような評判が立てば、製造業として継続することはできないのです。

町工場は大企業と違い、資金も設備も限られており、働く人が少ない。東京では零細な町工場が多く、従業員が10名未満のところが大半で、2〜3名で回している工場も決して少なくはありません。我が社も従業員12名で工場を運営しています。 そうした少ない人数で品質管理を徹底するということは、予想以上に大変なことです。

品質管理専門の人員を置ければ良いですが、そのような余裕はないのが多くの町工場の実情でしょう。 一方、不良品が出た場合の損失の影響は、小さな企業であればあるほど大きくなります。1分1秒が貴重な工場にとって、不良品を作る時間はたとえ短時間であっても、無駄にすることはできないのです。町工場にとっても、品質管理の良し悪しは、死活問題です。

 

シルクスクリーン印刷で50年の業歴

では、町工場は限られた人員や資金で、どのように品質管理を徹底できるのでしょうか。まずは我が社の事例をご紹介したいと思います。

当社は、シルクスクリーン印刷を専門とする印刷会社で、特にプラスチックやガラスの容器などの立体物や曲面への印刷を得意としています。創業から50年、東京都葛飾区においてこの道一筋で事業を営み、私で2代目になります。少量生産に特化し、一つ一つを手作業で丁寧に印刷することにこだわっています。

顧客は、大手の化粧品や飲料メーカーのほか、レストランやホテルなどが多く、 いずれも高い品質を求めて当社に来られます。受注時には、顧客からの厳しい品質管理の査定をパスする必要があります。

 有限会社小堀加工所

最大の敵「チリとホコリ」への対応

印刷業にとって、最大の敵は何と言っても「チリとホコリ」です。印刷物にチリが混じっては、使い物になりません。このチリとホコリへの対応が、シルクスクリーン印刷における品質管理の「いろは」の「い」となります。 と言って、当社のような小規模の工場では、クリーンルームを設置するような余裕はありませんし、半導体製造のような品質は求められていません。

町工場には、町工場の知恵で対応する必要があります。 当社では工場の構造上の工夫と、日々の当たり前だけど大切な作業の継続を心掛けています。

工場の構造上の工夫は、まずは玄関にあります。当社の工場は玄関から工場内部までに数段階の段差を設けています。これは玄関から入るホコリが中に入りにくくするためのちょっとした工夫ですが効果的です。

それでもチリやホコリが入ってくるのを避けられませんが、特に気をつけているのはチリが床に溜まる原因を排除することです。エアーを流すという一般的な方法はもちろん、換気などに使われるゴムホース類は一切床に置かず、天井に取り付けています。こうしたゴムホースがチリやホコリを引きつけ、溜まる原因になるからです。

そして日々の運営として、機械の周りを整理整頓し、毎日機械の下と周辺の床は、掃除機やモップで綺麗に掃除しています。こうした作業は当然のことなのですが、当たり前のことを当たり前のこととして継続することが大切だと思い、徹底しています。 その他にも、細かい工夫をたくさんしているのですが、ここでは長くなるので省かせて頂きます。

 

剥離テストによる品質検査

当社は、品質検査にも町工場ならでの工夫をしています。 容器などへのシルクスクリーン印刷の場合、特にチェックしなくてはならないのは、印刷の剥離状態です。 印刷の工程は、「前処理→印刷→乾燥→冷却→検査→納品」という流れを取ります。印刷した後に乾燥機を通して印刷を定着させ、自然冷却するのですが、印刷の定着状態を検査するための「剥離テスト」を徹底しています。

これはJIS規格に基づいて、ニチバンの15mm以上のセロテープを印刷面に貼り付けてははがし、印刷面が一緒に剥がれないかどうかを確認するものです。剥がれなければ良く、剥がれれば不良ということになります。簡単な方法ですが、長年の経験で最も信頼のおける検査方法です。

検査部門を特別におく余裕はないので、作業員が検査員となり、相互に検査を行っています。1作業ごとに2名がペアとなり、検査員Aが9時、10時、11時・・・と1時間ごとに検査すると、それぞれの30分後に検査員Bが検査を行うというものです。それぞれの検査員が、お互いの検査を確認しあい、品質向上へと努めています。 こうした品質管理は、工程管理にもつながっています。

細かい作業ですが、こうしたチェックを組み込むことで、不良品を作り続けて無駄にする時間を1秒でも減らしたいという狙いがあります。機械を自動運転させるのではなく、一つ一つを手作業で印刷している方法に適した検査法で、町工場はそれぞれの体力や環境に応じて、試行錯誤していくことが大事だと思います。

 

検査記録を残して万が一に備える

検査による水際での対策も大事ですが、万が一、納品後不良が発覚した場合の対応にも備えておく必要もあります。あってはいけませんが、人間がやっている以上、ミスが発生するリスクを消すことはできません。大事なことは、不良品が生じた場合の説明責任を果たすことと、改善点を明確にすることだと考えています。

そのため、上記の検査は、すべて詳細に記録に残しています。テスト結果(セロテープ)は、サンプルとして記録用紙に検査ごとに貼られ、いつ、誰が検査し、どのような結果だったかを製品ごとに時系列に沿って1枚の用紙でわかるようにし、それを保存管理しています。

これによって、不良が発覚した際に、顧客に対してどのような管理のもと、不良が生じたのか説明でき、また問題点を把握し、対応策についても検討しやすくなっています。

 

顧客から教わり、失敗から学ぶ

こうした当社の品質検査のシステムは、最初からあったわけではありません。お客様から教わることが多く、色々なアドバイスを真摯に受けて止めて、自分たちで可能な限りの知恵と工夫で対応してきた結果です。数え切れないほどの失敗に向き合ってきた積み重ねの結果、今があります。

例えば、ある大手メーカーさんには、外注先の選定基準には作業場の照明の明るさがあることを教わりました。検査を一定の明るさの元に行ったのでなければ、正式な検査と認めないというのです。早速、作業場をLED照明に変更し、1800~2100ルクスの照度を維持しています。

町工場は、身の丈に応じた最上の品質管理を目指すべきだと思います。業種や企業規模に応じて、例えばITを導入した管理体制を整える必要もあれば、それができない企業でも、諦めずにできる範囲での工夫を重ねていく必要があると思います。

町工場にとって大事なことは、小さな努力の積み重ねを、持続的に行っていくことではないでしょうか。日々少しでも改善しようとする意志と、変化する社会の価値観や顧客の要望にきちんと向き合うことです。町工場といえども、品質管理にゴールはありません。

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