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グローバル案件:EV二輪車の開発

TOKYO町工場HUBと株式会社小川製作所は、ロンドンと香港に拠点を持つプロダクトデザイン事務所「ARVenture Studio(代表: Andy Lee氏)」とのコラボレーションで、新型EV(電動)二輪車「Skoot S1」の開発に取り組み、このほど完成し、予約販売が開始されました。

新興国仕様の新型車

Skoot A1は、アフリカや東南アジア等での利用を想定されて開発されました。こうした地域では、オートバイを使用した人や荷物の運送が盛んです。しかし、大半のオートバイは化石燃料を使用して排ガスがひどく、大気汚染の原因の一つになっています。さらに低い品質で燃費が悪く、故障が多いのが実情です。

Skootは、地球環境に優しく、耐久力があり、高い品質と低コストを実現させることを目指してデザインされ、開発されました。デザイナーのAndyさんは、世界中のユーザーの声を聞き、ゼロベースで機構を設計。シンプルでありながら、機能性と耐久性を持ち、現地の人でも手が届く手頃な価格に抑えたデザインに仕立てました。

ボディフレームの設計とプロトタイプ作り

TOKYO町工場HUBの役割は、Skootのボディフレームを設計し、プロトタイプを制作することでした。Skootのパーツの多くは既製品で組み立てるように設計されたものの、ボディフレームについては特注が必要でした。後部に重い人や荷物を経常的に載せる特殊な使用法に耐えるものでなくてはならず、車体の安全性と耐久性を担保する最も重要なパーツでした。信頼できる日本技術で作りたいということで、2021年2月にAndyさんから私たちに相談のあったものでした。

設計とプロトタイプ制作を担当したのが、株式会社小川製作所の小川真由さんです。Andyさんの当初のデザインを分析し、必要な補強や修正を行い、設計書(ドラフト)を作成。細かい点を詰めて最終設計書に仕上げ、自社の工場でプロトタイプを作り、来日したAndyさんが直接検品の上、組み立てを担当する中国の工場へ発送致しました。

ボーダーレスな開発

本件は、もともと欧州のグローバル企業がARVenture Studioにデザインを依頼したもの。香港でデザインし、中国で制作し、アフリカを含む世界中での販売を目指したものでした。その中で最重要部分は日本の工場で作るという非常にダイナミックな開発となりました。

今回のようなボーダーレスな開発案件は、今後も活発化するものと思われます。このような動きの中に、東京の町工場の技術力を活かす余地は大いにあるはずです。TOKYO町工場HUBとしては、グローバルなネットワークを広げながら、東京のものづくりのステイタスを上げていきたいと考えています。

なお、今回の案件の中で目立たないところで光った技術力がありました。発送用に特注した段ボール箱です。TOKYO町工場HUBの戦略的パートナーであるパッケージアート株式会社に発注したところ、設計図だけで最適なサイズのボックスと内部の緩衝材を作り上げてくれました。寸分の狂いもなくぴったり収まった時には本当に感動しました。職人の技術力は本当にすごいものです。