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鍛金(銅製急須づくり):ものづくり動画

「鍛金」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。鍛金とは金、銀、銅、鉄など金属を金槌で叩くことで形を変えて、器物を作り出す金属加工の方法です。金属は叩くと硬くなります。火で熱すると柔らかくなります。叩いて形を変え、硬くなれば火で熱して柔らかくする。この作業を何度も何度も繰り返しながら、器や急須などを作る伝統技術です。

古くは古代エジプトでも見られた手法で、日本には弥生時代に金属文化が大陸から伝わった際に受け継いだものです。銅鏡や祭具、戦国時代の甲冑にも鍛金の技法が用いられています。江戸時代には庶民にも広がりを見せ、さまざまな生活用品をつくる職人技と共に発展していきました。

神田外国語大学生である西村拓巳さんと進めている「ものづくり動画プロジェクト」では、荒川区の鍛金工房「長澤製作所」のご協力を得て、鍛金の現場を撮影させていただきました。このたび、編集された動画が公開されましたので、ここに共有致します。

一瞬の叩きに命を注ぐ

この動画を見れば、日本の文化のルーツ、根っこに何があるかが分かります。伝統技術とは懐古趣味ではなく、日本文化の土台を支える大切な柱です。それは宙に浮いた概念ではなく、しっかり地に足をつけた人たちの日々の努力と精進の賜物。私たちが「日本人である」と胸を張って日本文化を誇れるのも、こうした職人たちが手を使い、神経を使い、足腰を使いながら、つまり全身全霊を込めて、ひとつひとつの日常品を作ってくれているからです。

例えば注ぎ口。長澤さんが作る急須の注ぎ口は、水切れが良く、あと漏れがない。つまり、お湯を注いだ後に、先っぽから水が漏れてしたたるということがない。キレが命だという。単純に水が滴り落ちないだけでなく、戻した時に「ピタッ!」とお湯が止まるのが大事。

注ぎ口の先の工程は実際には5秒とかからない。5秒で圧倒的なキレを作る。その一瞬の叩きが、つまり伝統文化です。この技術を習得するのに、長澤さんでも10年を要したそうです。

ものづくりを舐めてはいけないのである。

西村さんの動画は、その大切な事実を、目の前にあるのに見えないものを、いかにも自然に、時間と空間から切り取ってくれています。なんの演出もなく、なんの味付けもなく、あるがままに写しています。西村さんが画像を通して伝えているのは、西村さん自身の好奇心やワクワク感やドキドキする心です。職人との静かな対話がとても素敵です。

長澤製作所の3代目長澤利久様、鍛金職人の熊木花帆様には、改めて深く御礼申し上げます。

西村さん、Good job!!

西村さんの動画は、Youtubeチャンネル「The Process」にアップされています。ぜひ、チャンネル登録を!

西村拓巳さんのプロフィール

神田外語大学イベロアメリカ言語学科ブラジル・ポルトガル語専攻3年。

小学生の時に始めたソフトボールをきっかけに、高校まで野球に励む毎日を送る。部活動を引退後、友人と旅行の1日をまとめた動画を作成し動画の魅力を発見。高校卒業時にクラスの卒業ムービーを作り、自分が作った動画で人の心を動かす経験をし、動画の魅力を再発見。大学に入り結婚式の最後に流れるエンドロールを撮影する仕事を開始。その後、自分で企画をしてみたいという思いから、日本の技術を世界に届けることを目標にした本プロジェクトを開始し、様々な方に支えられ現在に至る。

西村さんのメッセージ

将来は映像に関わる仕事をやりたいと思っています。しかし、このプロジェクトで多くの方と出会い、「何をするかよりも、誰とやるか」という価値観を大事にしたいと強く感じました。そのため人との繋がりを大切に、これからも様々なことに挑戦していきたいと思っています。