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江戸簾(すだれ)製作:ものづくり動画

簾(すだれ)は、日本に古くからある伝統工芸です。強い日差しを防ぎながら、風を通すので、日除けや部屋の仕切りなどに使われてきました。簾の歴史は古く、平安時代に貴族が使っていたようです。徐々に庶民に広がり、夏の風物詩となりました。材料は竹や葦。天然素材で見た目も涼しく、簾を通して入ってくる淡い光も美しいものです。

今回、撮影させて頂いたのは、江東区深川にある豊田スダレ店。3代目の豊田勇さんは、この地で60年以上、簾作りを続けています。高度な竹ミガキや竹割りの技術を保持し、江東区無形文化財に指定、東京マイスターにも認定される名人です。芝居用簾類の製作技術も継承して、歌舞伎座をはじめ、現代舞台技術を支える技術者の一人として貴重な存在にもなっています。

江戸簾は、自然素材の味わいをそのまま生かすところに特徴があります。自然な風情と様式美を両立させる技術は奥深く、素材の選定、一本一本の仕上げ、組み合わせる並びと順番など、一見単純に見えて隅々まで匠の技術が宿っています。天然の素材は、全てに違う個性があります。実際に編む作業は工程の終盤の一つに過ぎず、素材の処理に多くの手間と時間がかかります。見えないところに、真の技術が隠れています。

簾を編む機械や道具は、豊田さんが手作りしたもの。思い通りに編むため、素材や形状、デザインに応じて細かな調整を重ねていきます。戦後の復興期から高度経済成長の時代を経て現代に至る前、半世紀の時代を共に過ごしてきた編み機は、豊田スダレ店の歴史を反映して、それ自身が文化財のような趣です。

撮影は2日間に渡って行いました。実は豊田さんは、今年(2022年)9月に、地域の再開発計画で工房のある店の立ち退きが決まったことを節目に、廃業される予定です。日本で販売されている簾の多くは海外製。豊田さんは、日本伝統の簾作りを東京で継承してきた数少ない職人のひとりです。時代の流れといえばそれまでですが、本当に残念です。

長い年月の歴史が、工房の壁に、床に、天井に染み込まれています。以前は、多くの職人さんを抱えていたそうです。この場所の歴史とともに、引き継がれてきた技術が失われるのは、心の中の大事なものを落としてしまったような、寂しい気持ちがします。

西村さんの撮影が貴重な記録となって、少しでも多くの方々に、消えかけている和文化の最後の輝きが届きますように。

ご協力をいただきました豊田勇さんとご夫人、紹介を頂きました田口英紀さんには、心より御礼申し上げます。西村さん、今回もお疲れ様でした!

西村さんの動画は、Youtubeチャンネル「The Process」にアップされています。ぜひ、チャンネル登録を!

西村拓巳さんのプロフィール

神田外語大学イベロアメリカ言語学科ブラジル・ポルトガル語専攻3年。

小学生の時に始めたソフトボールをきっかけに、高校まで野球に励む毎日を送る。部活動を引退後、友人と旅行の1日をまとめた動画を作成し動画の魅力を発見。高校卒業時にクラスの卒業ムービーを作り、自分が作った動画で人の心を動かす経験をし、動画の魅力を再発見。大学に入り結婚式の最後に流れるエンドロールを撮影する仕事を開始。その後、自分で企画をしてみたいという思いから、日本の技術を世界に届けることを目標にした本プロジェクトを開始し、様々な方に支えられ現在に至る。

西村さんのメッセージ

将来は映像に関わる仕事をやりたいと思っています。しかし、このプロジェクトで多くの方と出会い、「何をするかよりも、誰とやるか」という価値観を大事にしたいと強く感じました。そのため人との繋がりを大切に、これからも様々なことに挑戦していきたいと思っています。